印鑑付きボールペンをめぐる長い挑戦
ペンと印鑑が一つになっていると便利だというのは、まあ、誰が考えても分かる事で、だからこそ、シヤチハタはずーっと印鑑付きボールペンを作り続けています。それが「ネームペン」です。ただ、これも当然なのですが、ペンの尻軸に印鑑を乗せるのですから、どうしても後ろが重くなります。バランスを取るために前も重くすると、全体が重くなって書きにくくなってしまいます。これまでの「ネームペン」の歴史は、言わば、ウェイトバランスとの戦いの歴史と言えるでしょう。そして、もう一つ大事なのが、その機能上、どうしても尻軸が太くなることからくる、デザインのバランスの悪さ。これに対しても、デザイナーを起用するなど、さまざまな工夫がされてきました。形の問題とウェイトバランスの問題は不即不離というか、本来、同時に解決するべき問題。つまり、シヤチハタは、ずっと正しい方向での試行錯誤を続けてきたわけです。
サインをして捺印、伝票を書いて捺印、いざという時にペンケースの中に印鑑がある、などなど。ペンに印鑑が付いていない方が不思議なくらい、ビジネスで「書く」行為には、捺印が付いて回ります。その用途に近いものとして、「プチネーム」のような製品は人気もあるし、使っている人も多いのですが、印鑑付き筆記具が、今一つ一般に普及しないのは、やはり、その文房具としての完成度の問題だったのだと思うのです。
カーボンファイバーによる軽量化が実現した使い勝手
そして登場した、新しい「ネームペン」は、何と、軸の素材をカーボンファイバー製にすることで、極端な軽量化を実現したモデル、その名も「ネームペン カーボネックス」。その重量は約33g。パーカーの「インジェニュイティ」が約44g、三菱鉛筆の「ジェットストリーム4+1」が約24gなので、普及版多機能ペンと、高級筆記具の間くらいの重量です。もっとも、カーボンファイバーを軸に使ったボールペンは、十分高級筆記具なので、その意味では、軽めの高級ボールペン、という事が出来るでしょう。使用リフィルが金属製の、パーカー規格のもので、これが約4gあるので、軸と印鑑合わせて29g。シヤチハタ「ネーム9」が約15gなので、ボールペン付きで、しかも高級筆記具の風格で33gなら、十分合格範囲の重さだと思います。シルバーの軸はカーボンファイバーではなくグラスファイバーを使用。とても美しい仕上げだ。重さは同じく33g。だが、気のせいかも知れないが、ほんの少しだけ、カーボンファイバー軸のブラックやオールブラックに比べ、重い気がする。
印鑑として、ボールペンとして
印鑑としては、クリップを上に向けて捺印すれば、上下がきちんと合うため、とても押しやすいと感じました。銀メッキ加工されたキャップは安っぽくなく、深めに作られているせいか、着脱が容易な割に、しっかりと装着されていて使用時に抜け落ちてしまうという事がありません。クリップに人さし指を掛けるように持って、印鑑部の下部を紙にあてて、そのまま向こう側に倒すようにすると、特に力を入れる事なく、目的の場所にキレイに捺す事が出来ました。注文時に、インクの色、文字の書体を細かく指定出来るので、好みの印鑑を作る事が出来ます。ボールペンとしては、リフィルがパーカー規格のものなので、さまざまなメーカーの豊富なバリエーションから選べるのが良いですね。オートのリフィルを使えば、ソフトインク(粘度の低い油性インク)が使えますし、シュミット社の「easyFLOW 9000」も低粘度油性インクですね。他にも、ゲルインクや水性ボールペンのリフィルもありますから、好きなものと交換して使えます。とはいえ、標準装備されているシュミット社の「P900」というリフィルも、なかなか滑らかなタッチで書ける優れもの。よほど、書き味が気に入らないという場合以外は、まずは、標準のリフィルを使うのが良いでしょう。
ガイド納富の「こだわりチェック」
軽くて、デザインも普通の筆記具に近づいたとは言え、持つと、やはり多少後ろが重いので、少し寝せる感じで書くとちょうど良いバランスになります。標準装備のリフィルは、かなり斜めにしてもスムーズに書けるため、筆記具の特性に合ったリフィルが選ばれているなと感じました。重さのバランスも、筆圧をかけて書き始めれば、後ろが重いという事は忘れてしまう程度のもの。グリップ側と印鑑部との太さがあまり変わらないからこそ実現したバランスだと思います。実際、それなりに長時間の筆記も、それほど疲れずに書く事が出来ました。これなら、サインと印鑑専用ペンではなく、普段使いの筆記具として使い、必要に応じて印鑑として使う、ということが出来ます。冒頭にも書いたように、普段使っているペンに印鑑が付いているというのは、本当に便利です。特に、今回の「ネームペン カーボネックス」のように、実際のルックスも重量も、普通の筆記具と変わらないデザインになっていれば、そこに「わざわざ」感がなくなり、自然に持ち歩いて利用する事が出来ます。この「何気なく持ち歩ける」を実現するために、カーボンファイバーを使っている、その必然性が好きです。
<関連リンク>
・「ネームペン カーボネックス」の製品情報はこちら
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