相続登記はしなければいけないのか?
よく「不動産を相続したのですが、相続登記は必ずしなければなりませんか?」という相談をされます。どうやら「相続登記は義務ではないし費用もかかるので、そのままでもよいですか?」ということのようです。結論は、余程の事情がない限り「相続登記はしておきましょう」とお勧めしています。というのも、これまで多くの人から「過去に相続登記をしなかったために今大変なことになっている」といった相談が後を絶たないからです。
そこで今回は、相続登記をできたにもかかわらず、しなかったために後に起こったトラブルをご紹介します。
相続登記をしないメリットは?
費用を節約したつもりがその反面リスクも
例えば土地を所有していた父が亡くなり母が土地を相続。子は1人で二次相続(母の相続)の時は自動的に自分が相続するからその時に相続登記しよう、ということならば問題ないかもしれませんが、このようなケースは稀です。
相続登記をしないと、その分、色々なトラブルのリスクが伴いますので、やはり相続登記をすることをお勧めします。
ケースによっては色々なトラブルがある
相続登記をしなかったために起こるトラブルは、後からでは取り返しのつかない大変な状況に発展することがほとんどです。また、いずれにも共通していることが、「当時はもめることなく相続登記ができたがしていなかった。相続人にもめるような人はいなかった」と安心していた人にこそ起こっているという点です。相続登記をしなかったトラブルの事例
実際に相談のあった事例をご紹介します。●気付いたら相続人(権利者)が多数
最も多い相談がこの、気付いたら相続人が多数いたというケースです。図を見てください。相談者は青のDさんです。
放っておくと関係者がどんどん増えていき、中には会ったこともない人も
黄色のAの相続時の相続人は緑のBとC。全ての財産をBが相続することにCは快く合意していたそうです。この時に分割協議書作成、相続登記をしていれば、Dさんは何も苦労なく今から相続登記できます。しかしそのままで今に至り、現在の相続の関係者はDさんを含め紫の人たちまで増えています。
Dさんからみると特にEさんは赤の他人ですよね。相続登記をするためには関係者全員から実印をもらわなければなりませんし、その中に認知症や行方不明・音信不通といった人がいれば、相続登記はほぼ不可能となります。
●気が変わった
この、気が変わったというケースもよくある相談です。父の相続人は母と長男と二男。父の相続時は母の意向もあって長男が相続することで二男も合意。しかしこの時に分割協議書作成、相続登記をしていなかった。
その後、母が亡くなり長男が相続登記をしようとしたら、今になって二男が土地の半分を欲しいと主張してきた。「信頼していた弟に裏切られた気分だ」と、母が亡くなったこととダブルのショックを受けられた相談者もいました。
他にもこんなトラブルが
相続人本人には想像もできなかった、こんなトラブルもありました。●相続人が他にもいた
父の相続人は母と長男。無事に遺産分割協議書も作成したが、相続登記はしていなかった。その後、母が亡くなり相続税を支払うために土地を売ることになった。土地を売るために相続登記を司法書士に頼んだところ、戸籍謄本で父に先妻の子がいたことが判明。子は自分だけだと思っていた長男は、会ったこともない自分と同じ権利を持つ異母兄弟と遺産分割協議をしなければ、相続登記、土地売却ができないことになってしまいました。
●先に相続登記をされてしまい行方不明に
安心はできない。相続人の思わぬ行動も
父の相続人は母と長男と二男。遺産分割協議書で自宅と駐車場を長男が相続することで全員実印も押しています。長男は相続税の支払いのため駐車場の土地は売却しようと考えていました。
しかし、いざ相続登記をしようとしたら、駐車場の土地はすでに母1/2、長男1/4、二男1/4の相続登記がされていた。さらに二男はこの土地に抵当権をつけて担保にし、借金をしたうえ姿をくらましてしまった。長男は駐車場の土地を売却できないため、自宅を売却することになってしまいました。
如何でしょうか?本人は相続登記せずそのままでよいと思っていても、思わぬトラブルが起こり得ます。絶対の安心はないと思いますので、相続登記ができるならすぐにしておきましょう。
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