イングリッシュガーデンの流行
1990年大阪花博以降、[ガーデニング]という言葉とともに、イングリッシュガーデンなる物が流行し、その手の雑誌等も増えました。当時のイングリッシュガーデンは、レンガ等で区画整理されたスペースに、計画立てて植栽され、整然と造られた動線を通ってその花を眺めるというものでした。誰が見てもうらやましい庭には、珍しい花が自慢げに咲いていたのです。
日本でも多くの人が真似をしました。レンガで小路を造り、ある程度の広さがあるレイズドベッド(花壇)に奥から高さ別に植栽して行きます。10種類も植えれば一杯になるのですが、植えたい植物はもっとあります。そうすると、あっと言う間にジャングルのような庭が出来上がります。高級なコース料理を目指したものの、気がつけばただ珍しい花が咲いているだけの闇鍋といった植物園が出来てしまいます。
一方、イギリスの庭では、娘のお庭を見て、「あなたの庭は直線が多すぎるわ」等、お母さんの口癖が飛び交う、言うならば母が娘に伝える家庭料理のような庭です。
しだいに、貴族の庭のような、人に自慢が出来る庭、「うらやましい」と言う感性で造る庭から、『自分らしい』という感性で庭を造るように変化してゆきます。
<ナチュラルな庭>
イングリッシュガーデンの人気から数年遅れでナチュラルガーデンという、雑木林風な庭が流行します。自然林等の景色を目指したその庭の実態は、
株元から数本幹が出る、株立ちといった無理な仕立ての樹木がもてはやされ、
イングリッシュガーデンとまじって出来た庭は、雑木林には見えませんでした。
[ナチュラルガーデニング]というムック本が発売されて以降、白い木のフェンスに、思い思いの雑貨やアンティークを飾ることが、ここ数年の流行です。
その雑誌の1号で取り上げられた庭の1つが私が手がけたウッドフェンスの庭でした。その頃はウッドフェンスと言っても、イメージしてもらえず、雑貨を飾るにいたっては、「3歩、歩けばガラクタにつまずく庭」と酷評されました。しかし、どちらも、今では庭の定番になりつつあります。
庭には、何があってもいいと思います。ただ、どこから見ても不自然ではないこと、そこに何年も前からあるようで、その場所にマッチしていること、つまり、誰もが見入るような場所ではなく、そこにあって当然のような場所を <ナチュラルガーデン>と呼ぶのではないでしょうか。
名前も知らないような珍しい植物がある庭、管理が難しい庭、そんな庭づくりがあってもいいでしょう。
洋風建築だけど和風庭園、誇りを持って作るべきです。和・洋の区別をする必要は、全くないと思います。
狭いスペースを有効に立体的に緑をふやす庭、管理が簡単な庭、かわいい雑貨やアンティークで一杯の庭、自分の感性に合った、身の丈にあった庭、庭にいて楽しく、また心地よい、そんな自分らしい庭が、<ナチュラルガーデン>ではないでしょうか。
帰宅して、 お客様を招いて、ただそこにいて、楽しくなる、ほっとっする、癒される、そんな場所が庭なのだと考えて、これから庭づくりについて解説していきたいと思います。