フィギュアスケートの未来に一石を投じた プルシェンコ
ロシアのフィギュアスケーター、「エフゲニー・プルシェンコ」。私が最も印象に残っているのは、彼の演技ではありません。2010年に行われた、バンクーバーオリンピックでの表彰式の場面です。彼は四回転ジャンプを成功させたにも関わらず、惜しくも銀メダルに終わりました。彼は表彰台に上がる際、優勝者の台に上がってから自分の台に立ちました。一見、負け惜しみのように見えますが、彼の意図した所はそんな低いレベルの話ではないと思いました。
彼は大会終了後、フィギュアのルール改善を求めました。その内容は、概ねこのような感じです。
「四回転ジャンプの点数をもっと高くしろ。他の選手ができない演技をした選手をもっと評価しろ」
私は全くこの意見に賛成です。当時、安定を求めるあまり四回転は回避されていました。しかし、それでは、自分の最高の演技ではなく、点数を確実に取れる演技をするようになってしまいます。
このような点から彼は、トリプルアクセルに果敢に挑み成功させた浅田選手を非常に高く評価していました。そして、彼もまた、四回転に挑み続けました。
彼が優勝者の台に上がったのは、「安定した演技を求める選手がいてもいいだろう。しかし、自分の限界に挑戦しないような選手が、優勝するルールなら、フィギュアの世界に未来はない」というような意味が込められていた気がします。
彼は、トリノオリンピックで圧倒的な強さを見せつけ金メダルに輝き、その後、一度は引退しています。にも関わらず、彼がバンクーバーで復帰を決意したのは、本来あるべきフィギュアスケートの姿を、教えるためだったのかもしれません。
彼はフィギュアにおいての勝ち負けを超越し、選手のあり方に疑問符を投げかけ、フィギュアの世界に大きな影響を与えました。彼は、別格と言うべき本当に偉大な選手だと思います。