騙し絵のサン・サティーロ聖堂
サンタ・マリア・プレッソ・サン・サティーロ聖堂はミラノのドゥーモにほど近い場所にあります。決して派手なたたずまいではありませんが、ちょっとびっくりするような空間があります。賑やかなトリノ通りから少し引っ込んだ場所に入口があり、うっかりすると通り過ぎてしまいそうな小さな聖堂です。聖堂内部に入り、美しく装飾された内陣を眺めていると、何か違和感を感じませんか? 何だか教会の大きさに対して、奥行があるような。そう、この祭壇の奥行きは騙し絵の効果によるものなのです。前に進んで祭壇に近づくか、斜めから見てみると、絵がずれて見えるため、描かれた空間が実際のものではないことが分かります。
この聖堂を手掛けたのは、初期ルネサンスを代表するブラマンテで、1482-86年の作品とされています。実際の敷地はT字型をしていて、後陣を作ることができなかったため、ブラマンテは遠近法を使って、あたかも祭壇の後ろに空間が続いているかのように見せました。
私は友人に薦められて、この聖堂を見に行ったのですが、聞くと見るとではやはり大違い、というのはまさにこのことでした。祭壇に近づいて横から見てみたり、もう一度離れてみたりとかなりしつこく見てしまいました。
確かに描かれた空間は存在しないものなのですが、その実在しない後陣も含めて、聖堂の空間は作られているのです。仕掛けが分かっても、なんとも不思議な空間でした。
■サンタ・マリア・プレッソ・サン・サティーロ聖堂
・住所:Via Torino, 17-19, 20123 Milano
・一般公開時間:【月~金】7:30~11:30、15:30~18:30、【土】15:30~18:30
※教会内部は撮影禁止です。
※上記データは記事公開時点のものです。