日銀による買い入れ枠が拡大する可能性も
注目Jリートはオフィス系
「日銀が購入するJ-REITは、信用格付けがダブルA格(AA格)以上が対象で、発行済投資口数の5%を上限としています。ところが、対象となる銘柄は、日銀の保有比率が5%に達しているものもある。買い入れ枠を拡大する場合には、上限を10%まで拡大するか、対象をシングルA格(A格)まで広げる可能性があります。ここからシングルA格の銘柄を狙うという投資方法も考えられます」(関さん)
運用資産別では、「リーマンショック以降、厳しい状態が続いていたオフィス系が狙い目」だといいます。
「オフィスビルは、新規のオフィスビルが大量供給される“2012年問題”に加え、景気が悪いために空室が増え、賃料が下がるなど厳しい状態が続いていました。空室率は改善傾向にありますが、賃料単価は下がっています。ですが、景気が上向いてくれば、企業の収益も改善し、賃料負担力も高まることから賃料単価も上がるでしょう。そうなれば、来年以降は分配金が増える可能性もあります」
そもそもREITはインカム収入に注目して買う商品です。分配金が増えれば、買いたい人が増えて、株価も上がる可能性があります。時間はかかるかもしれませんが、長い目で見れば、価格が下がったところはオフィス系のリートを仕込むチャンスです。
大型テナントが退去したばかりの銘柄が面白い
なかでも注目したいのが、「大型のテナントが退去したばかりの銘柄」(関さん)だとか。賃料収入の減少が目に見えている銘柄など、買っていいものなのでしょうか?「景気が回復して賃料の相場が上がり始めても、既存テナントの賃料を大幅に上げることはできないでしょう。その点、新たに入居するテナントに対しては、その時の相場に見合った賃料を提示できます」
賃料単価の上昇が期待できる局面では、空室を持っていることが強みにもなるのです。なお、テナントとの賃貸契約は通常2年です。そのため、オフィス市況が改善して賃料相場が上がっても、全てのテナントの賃料に反映されるまでには時間がかかります。
「オフィス市況の回復が、リートの分配金に反映されるのは、2014年以降の決算からになるでしょう」
それも踏まえたうえで、今から買うなら、どんな銘柄がいいのでしょうか。
「たとえば、グローバル・ワン不動産投資法人とトップリート投資法人は、大型テナントの比率が高いため、テナント退去リスクを過剰に株価へ反映している可能性があります。もう少し購入単価の安いものでは、平和不動産リート投資法人は、テナント集中リスクがないもののやや出遅れ感が強くなっています。同リートの保有物件は中規模ビルが多く、大規模ビルが中心の他の2銘柄に比べ、賃料単価が上がって分配金が増えるまでには少し時間がかかるかもしれません。ですが、住居も組入れいる銘柄なので、収益の安定性の面ではオフィスだけに投資している銘柄よりは安定感があります。また、どの銘柄も、目先は売られる場面もあるかもしれません。1年以上保有できる余裕資金で購入し、年2回の分配金を得ながら、じっくり保有しましょう」
円安の進行で外国からの観光客が増えることも期待されることから、ホテル特化型のジャパン・ホテル・リート投資法人にも注目できるといいます。
「10万円以下で購入でき、予想利回りは6%近くあります。なお、この銘柄は分配金が業績連動型で、決算も年1回12月のみです。購入価格が安いからといって、一度にまとまった資金で購入せず、何度かに分けて少しずつ購入したほうがいいでしょう」
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取材・文/大山弘子 イラスト/竹松勇二 パネルデザイン/引間良基