人に合わせるかのように、だんだんまとまってゆく
細身のボディが繰り出す乗り味は、いかにも旧式のクロカンフィールである。都会では女性のゲレンデユーザーを見かけることも少なくないが、「よくもまあ、こんなに乗りづらいクルマを」と思ってしまうほど、そのライドフィールは昔風だ。GLクラスならこんな苦労をしないですむのに、と思うのだが、確かにその苦労をはね除けてあまりある“味わい深さ”が、Gクラスにはあるということだろう。そのパワフルな走り(バックを思い出して欲しい! )ゆえ、乗りはじめは何とも心細く、自身のドライビングに自信の持てない状況がしばし続くが、そこはメルセデスAMGのチューニングである。アンバランスな走りに驚きつつも、人に合わせるかのように、クルマがだんだんとまとまっていくのを感じる。
これがM・ベンツ流のまとめ方というものだろう。
ゆらりゆらりとタイヤのたっぱを感じさせる古めのいかめしい乗り味も、コーナー毎で早めに介入してくるESPも、ためにためて最後にダメ押すブレーキフィールも、慣れてくれば妙に乗りこなせてしまうもの。運転していて楽しいとさえ感じ始めた。
生産中止が囁かれつつ、こうして信じ難い性能を手に入れた最新のGクラス。ブルーテック(最新ディーゼルエンジン)まで手に入れて、日米はおろか、欧州でも再び人気が出つつあるらしい。とはいえ、そろそろ寿命も尽きるのではないだろうか……。
2000万円近い価格も、’93年に初めてV8エンジンを積んだときの限定車500GEの値段を考えれば安いものだ(なんとそのときすでに1630万円だった)。
今のうちにこっそり手に入れて、じっくり大事に乗っていく。そんなクルマになった。そろそろ1台、買っておいた方がいいかも知れない。