Panasonicの「UT-PB1」に見るプラットフォームの重要性
今回の騒動で宙に浮いてしまったのがPanasonicの「UT-PB1」のユーザーです。もともと、Raboo専用機としての位置付けで発売され、Panasonicは電子書籍サービスのプラットフォームを持たずに端末だけ楽天に提供するという形を取りました。これは、SONYやBookLive!が発売した電子書籍端末に自社の電子書籍サービスを提供することとは異なり、電子書籍プラットフォーマーの意向に左右されるリスクが発生し、実際に今回の楽天の意向に電子書籍端末「UT-PB1」ユーザーが宙に浮いてしまう結果になったのです。※「UT-PB1」は、のちのUPDATEで他の電子書籍サービスを利用できるようになりましたが、Rabooで購入したコンテンツは引き継げませんでした。
このことから、電子書籍サービスはDRMの問題である、どこの書店でどの端末でどんなコンテンツを買う自由がない限り、電子書籍サービスと電子書籍端末は一体のサービスでなければならないという事を表していると思います。
また、電子書籍プラットフォーム立ち上げにはかなりの投資が必要な様で、BookLiveは当初16億円の資本金を持って立ち上げた後、更に29億円の増資を行なっていることなどから、相当な覚悟を持って参入することになります。Panasonicは以前に電子書籍サービスをたちあげて撤退した経緯がありますが、今回はリスクを少なく他社の電子書籍サービスに端末を提供するだけにとどめたわけですが、同じく電子書籍サービスをたちあげて過去撤退したSONYとは違う結果になっています。
PanasonicはSONYやBookLive!が端末だけでなくプラットフォームを提供して総合的にマネタイズを図る戦略とは異なり、メーカーとして供給した形となったわけですが、Panasonicとしてもっと総合力を発揮してVIERAやDIGAなどと連携する事は十分検討できたはずです。例えば NTTぷららが提供するひかりTVブックは、STB(セット・トップ・ボックス)を介して、テレビで電子書籍が購入出来ます。購入した電子書籍を、所有するスマートフォンやiPadにダウンロードして楽しめるという形を取っています。Panasonicがプラットフォームまで提供していればこういったことも検討できたのではないでしょうか?
結局、PanasonicはRabooのサービス終えるという説明をユーザーするにとどまり、合わせて「UT-PB1」をUPDATEにする事により、他の電子書籍サービスを利用できるとアナウンスしていますが、Raboo専用機として購入した当初、読書専用機としては安くない34,800円という金額を払った人たちはPanasonicと電子書籍業界にかなり失望したのではないでしょうか?
Rabooが残した傷跡
Raboo終了は普及の拡大に入った、電子書籍ユーザーに電子書籍サービスの永続性が重要であるということを気付かせてくれましたが、そのことにより、どの電子書籍サービスが続いていくのか?という判断をユーザーがすることになります。日本の電子書籍サービスは過去撤退をしており、「どうせ読めなくなるんでしょ?」という気持ちから「amazonなら多分撤退しない」という安心感のあるKindleを選ぶという心理も有るのではないでしょうか?2013年3月31日でRabooのすべてのサービスが終了し、「UT-PB1」ユーザーは他の電子書籍プラットフォームでまた買い直すという手間と出費を伴います。果たして、そのような心理的な状況で電子書籍を楽しむことができるのでしょうか? そして、Panasonicは「UT-PB1」のサポートをいつまで行なってくれるのか?というところも気になるところです。
今後、Rabooに続く短命な電子書籍サービスが出ないことをガイドは願っていますが、電子書籍業界関係者から聞こえてくる話では、近いうちに再編が起こるのではないかと予想しています。ガイドの杞憂であれば良いのですが。