柔道の「真の天才」野村忠宏

柔道選手には個性的で印象に強く残っている方が多いのですが、私の中でどなたか一人だけ挙げるとすれば、「野村忠宏(ただひろ)」選手です。

野村選手といえば、全オリンピック競技を通じてアジア人男性で唯一の五輪三連覇(アトランタ、シドニー、アテネ)を果たした方です。

60kg級の小柄な選手ですが、技の多彩さ、切れ、スピードがどれも抜きん出ていました。

そして野村選手には、数々のすごい逸話があります。
  • 試合前に相手を研究しない主義
  • 集中力がずば抜けていて、大きな大会の本番に圧倒的な強さを発揮
  • 練習量が他の選手よりはるかに少ない
  • 試合中相手にポイントで大きくリードされていても、最後の数秒で大技一発で逆転したことが多数ある
  • 五輪で偉業を成し遂げながら、谷亮子選手と試合日がピタリと重なり、新聞の一面を一度も飾れなかった
  • 彼を知る柔道関係者全員に「真の天才」と言わしめた
  •  
ほかにも試合の勝ち方がとても美しいことも印象的です。特に大柄な選手を相手に芸術的な背負投げが決まったときは会場にどよめきが起こることが多く、柔道の本質「柔よく剛を制す」姿を観客の眼前で体現し、魅了するのでファンが多い方でした。

一方、今ひとつマスコミ受けしなかったのは、ビッグマウスで自らを天才と公言しはばからない側面があったからのような気がします。

最近では日本でもいろいろなジャンルのスポーツ選手、武道家にビッグマウスの方はいますが、野村選手の場合は大口に公言したことを本当に実現してしまう、他に類を見ないタイプの天才でした。

そのため、マスコミが偉大な選手にはこうあって欲しいという理想の選手像とかなり違っていたために、実力に比べ、扱いがずっと小さい部分があったように、個人的にですが、思うところがあります。

あと記憶に残っていることとして、以前『ジャンクSPORTS』という、スポーツ選手の人柄を楽しく紹介するテレビ番組がありましたが、野村さんは篠原信一さん(前・全日本男子柔道監督で野村さんの先輩)とお二人でよく出演されていて、ありえないような逸話が掛け合い漫才風(お二方とも関西人出身)にお二人の口からポンポン飛び出すので、とても面白く、私はむしろこのような面からファンになりました。

話の内容からは柔道への敬愛や真摯さが伝わってきて器の大きさがうかがえ、私には人柄の面でもすばらしい方に思えました。



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。