意外にある、首都圏の小さな鉄道たち
首都圏の鉄道というと、昼間でも10両以上の長大編成の列車が頻繁に走る路線というイメージがある。ところが、中には短い編成の列車が単線の線路をのんびり走っている地方のローカル線と大差ない路線が存在する。ここでは、そうしたエアポケットのような「意外な」小さな鉄道を訪ねてみたい。首都圏在住の人なら、時間も運賃も大してかけずに乗りに行くことが出来るだろう。ちょっとした散策におススメの手頃な路線でもある。寅さんの故郷を走る京成金町線
京成上野から各駅停車で20分ほど、東銀座から都営地下鉄浅草線の直通電車で25分ほどの高砂駅。改札を出ると、コンコースの向い側に金町線専用の改札口がある。同じ京成線なのに、別の改札口があるとはユニークだ。都心から乗ってきた電車は地平ホームに到着したが、金町線は高架にホームがある。それも線路は一線だけ。新しいけれど、ちょっとわびしい。四両編成の電車は高架から地上に下っていくと、車両基地とつながっている線路と合流して、あっという間に柴又駅に到着だ。金町線唯一の中間駅。単線なので、ここで対向電車とすれ違うと、次はもう終点の金町。全線乗り通しても5分である。せっかくなので、柴又で途中下車してみよう。
柴又といえば国民的人気を博した寅さんが主人公の映画「男はつらいよ」シリーズの舞台として知られる。寅さんを演じた渥美清は1996年に亡くなったが、その人気は今も衰えることがない。
柴又周辺は、都内なのに、どこか遠いところへ来たような雰囲気に浸れるのが好ましい。柴又駅前広場に立つ「寅さん像」。いつも観光客がたむろして、記念写真を撮っている。
帝釈天への参道の両側にはお店がずらりと並ぶ。寅さん映画に出てくる団子屋で一休みするのもオススメだ。帝釈天でお参りをしたら、江戸川沿いにある「寅さん記念館」に行ってみよう。映画ゆかりのセットやポスターなどがぎっしり展示されている。その中で、ユニークなのが、人車鉄道のジオラマ模型である。
人車というのは、人が車両を押して走る鉄道で、明治期から大正期にかけて全国に存在した。京成金町線の前身は帝釈人車鉄道(後に人車軌道と改称)であり、帝釈天参拝のための鉄道の動力は、蒸気や内燃機関に依ることなく、人力から一気に電気へと発展を遂げた稀有な歴史を持つ。
単線の線路は終着駅金町まで一本のままだ。片面ホームで乗客を降ろすと引き返していく。コンビニや語学学校の看板に埋もれるように、ビルの一角を間借りしたような小さな終着駅である。
日中は15分毎、朝夕は約10分毎に運転
■寅さん記念館
URL:http://www.katsushika-kanko.com/tora/
リニューアルに伴う休館 2012年12月3日(月)~14日(金)の12日間