遺産分割でもめないためには「公正証書遺言」
「泣く泣くも良い方をとる形見分け」と言いますが、これは誰もが持つ自然な感情です。普段は被相続人に対する尊敬の念や道徳規範等に拘束され、個々の自制心が働いています。遺言は、相続と同時に発効する新しい道徳規範とも言うべきもので、良識在る社会人なら多少の不満はあっても大抵は問題が表面化することはありません。
やはり遺言者の意思の尊重という大義の前に自制心が働くのでしょう。もっとも、世の中には常識の通用しない相続人がいるかも知れません。でも、そんな時にも遺言は有効な手段となります。被相続人を虐待したり、耐え難い重大な侮辱や著しい非行のあった人を、相続人と認めないよう、遺言で相続人を廃除することもできます。
このように遺言があることで、ほとんどのもめごとを回避できるのでは、と思います。
公正証書遺言の作成時のポイント
私の経験では、被相続人の生前、遺言内容が一同の前で披露されオープンになったことで、その後の遺産分割は比較的スムーズに進みました。そのポイントは、遺留分を侵害しない範囲で財産を分配し、遺留分減殺請求権が行使されないよう配慮した内容が功を奏したのではないかと思います。その点からも、やはり「公正証書遺言」がベストだったと思います。
公正証書遺言を作成時には、土地や家屋などは登記簿謄本通りに正確に、また、預金なども定期か普通かを正確に把握しなければなりません。そのため、公証人に説明ができるように財産のリストを作るなど、事前に漏れ落ちのないように整理できたことも良かったのではないかと思います。
最後に、公正証書遺言が無効だと言われないよう、被相続人に遺言能力がある間に作成しておくことを忘れないでください。