2016年に米国はLNGの純輸出国に
シェールガス革命における投資チャンスはどこにあるのか・・・
当然、価格差が大きくなると、その差を埋めるべく、気体のガスを液体(LNG)にしてでも貿易(米国から他の国へ輸出)をしようとするのが自然であり、そのような取引によってやがて価格差がなくなっていくものと思われます。液体にするコストは輸送を含めて約6ドルですが、3ドル台の米国ガスならそれを足してもアジアのLNGより大幅安です。著しい価格差のあるものは、何であれ安いところで買って高いところで売ろうとするアービトラージ(鞘抜き)が起こるため、やがて価格差は解消されます。少し前まで同時上場している中国株の本土上場株価(A株)と香港上場株価(H株)に大差があり、一物二価となっていましが、高い方を売り、安い方を買う裁定取引によって全体的な格差は解消されました。
今後の需給に関わるニュースでは、すでに韓国ガス公社は米国産シェールガスを液化して輸入する20年間の長期契約を結んだと伝わります。この米国初のLNG輸出は2016年にヘンリー・ハブのあるルイジアナ州から出荷されるとのことです。
米国には原則エネルギーの輸出には国家戦略上の制限があり、自由に輸出はできず、これからどこまで認可されるか不明です。また早くともLNG輸出は2015年以降と見られています。しかしその勢いは大きく、米エネルギー省によると、2016年に米国はLNGの純輸出国に転じるとあります。これは1958年に化石燃料の純輸入国(国内供給より消費量の方が多い状態)になって以来、歴史的な転換です。
中国の輸入が増えれば、他の資源価格と同じく上昇転換も・・
ちなみに、米国だけでなく、カナダにも同様の動きがあります。シェールガスの一大開発ブームに湧く地域は米国の中央部のカナダに接するノース・ダコタ州です。ここからカナダ側に入ったアルバータ州(ロッキー山脈)あたりにもガス田が沢山あります。同じ北米でもカナダからのLNG輸出は自由なので、現在三菱商事と東京ガスが共同で西海岸からのLNG輸出基地の建設を進めています。ここまで産地からパイプラインを引けば、西海岸なので日本向け船賃も納期も(ヘンリー・ハブのあるルイジアナ州や別のシェールガス産地のある東海岸などより)有利です。日本最大の石油会社、国際帝石は豪州で「イクシス」という5年で2.7兆円をかける一大LNGプロジェクトを開始したところです。これは日本が主導する過去最大のガス開発で、着工式には豪首相や日本の経産省副大臣が出席する力の入った計画です。その国際帝石はカナダのシェールガス権益も保有し、LNG化して日本への輸出を目指すところです。
元々日本は世界の貿易量の4割以上を占めるLNG輸入大国でした。原発が停止したことでその量はさらに増える見込みです。そして、今後は中国も輸入が劇的に増えるでしょう。IEAの予測によると、2017年までに世界の天然ガス需要はアジアの需要拡大で、今より17%増えるとのことです。特に中国は昨年の消費量から倍増以上となる予想です。石油や銅、穀物ではすでにメジャーな輸入国となっている中国ですが、これまでLNGについては殆どありませんでした。
しかし、かつて中国が輸入を加速させた商品の価格はどうなってきたかを考えると、現在大きく下がっている米国の天然ガス価格も上昇転換が起こる可能性があり、そこに投資のチャンスがあるかもしれません。ちなみに中国にも31兆立方メートルという、とてつもないシェールガス層が眠っています。中国でもシェールガスの開発は進めていますが、技術的には非常に難しいものがあり、さすがの中国もシェールガスに関しては長期的目標を持つのみです。2015年までに何とか僅かでも生産に成功し、2020年には全体の1~2割程度の量にまで持っていきたいところです。
現在のところ、いくつかの中国企業に、シェールガス開発の技術を持つシュルンベルジュなどの石油サービス会社が出資をしているところです。中国としては、米国大手石油サービス会社と積極的に中国企業を提携させ、技術の移転を狙いたいところです。中国進出で儲けたい米国企業と思惑は一致していると思います。ただ米国政府はそれを望んでいないかもしれません。今のようにシェールガス技術を米国が独り占めし続ければ、米国産の安い天然ガスを液化(LNG)し、中国を最大顧客として将来大量に輸出できるからです。
参考:グローバルグロースレポート
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