若者が貯蓄しすぎでいい理由5つ
「若者が貯蓄しすぎてもいい理由」を5つほどあげてみます。理由)借金を今の時代にしないほうがいいのは当然
明らかに言えることは「借金を前提とした消費」を考える時代ではないということです。雇用の維持、給与の増が安心して期待できる社会ではありませんから、将来に負債を抱えることは控えるべきです。また、インフレもない時代には、借金の価値はまったく目減りしません。金利だけがずしりと肩に乗ることになり、これを避けるための貯蓄は正しい行動だと思います。
理由)高額出費がほとんど無用の社会になっている
次に指摘できるのは「高額出費」はゼイタクであって、これを若者が不要としている時代になったということです。100円ショップやユニクロ、家電量販店の競争により、「安くてそこそこ質のいい」ものを生活のメインに置けばよくなりました。iPhoneや大画面液晶テレビも、本来数十万円してもおかしくない機能を3分の1以下で買えるわけです。レンタカーやカーシェアリングの普及も考えれば車を保有・維持するようなゼイタクも不要です。社会の変化が若者の貯蓄余力を生み出しているともいえます。これはよいことです。
理由)低金利ということは貯めることでしかお金は増えない
これほどの低金利がこれほど長く続くことは異常です。超低金利は資産形成上、利息に頼れないということでもあります。つまり、若い世代が将来の資金ニーズを考えてお金を増やすためには貯蓄率を高めていくことが重要です。まだ少ない年収であるにもかかわらず、家計のやりくりをして手取りの10%以上を残している若い世代が誉められるなら分かりますが、非難されるいわれはありません。
理由)給与が上がらない可能性を考えるほど早い貯蓄が必要
年功序列型の賃金制度は、子育て等でお金が必要になるに従い給与も上昇する仕組みでした。しかしこうした仕組みはほぼ終わりを告げ、だからといって若くて会社に貢献している人がしっかり年収増になるとは限らないのが現実です。能力主義賃金体系が実質的には賃下げになっていることはよくあります。つまり、将来の賃金増をあてにした生活設計はきわめて危険になっており、早い段階からの計画的貯蓄が必要となっているわけです。こうした不安を先取りしているのが若い世代の貯蓄率向上なのかもしれません。
理由)結婚が遅くなるほど20代で貯めておく必要性は高い
結婚が遅くなり、子育ての時期も遅くなると、50代の後半あるいは60代の前半まで教育費負担が生じることになります。こうした家庭の場合、自分の老後資金準備について手が回らないことになります。年金不安も考えれば老後の資金準備のリスクは無視できません。しかし、結婚が遅い世代においては、結婚後に夫婦が共同してお金を貯める時間も短くなります。結婚前にいくらお金を貯められるかは重要な課題です。それこそ結婚前に1000万円貯めるくらいの覚悟が今の若い世代には求められており、貯蓄率向上はむしろ歓迎されるべきことです。
騒音は気にせず、若者はバランスよく貯蓄に励もう
若い世代の貯蓄率の向上が将来に対する不安を反映している、というのはそれほど間違っていないと思います。しかし、不安を排除したとしても、若い世代がムダな消費に励むとは思えません。そもそもムダな消費に依存した経済がおかしく、若い世代のムダな消費で経済が活性化することは本質的な経済成長ではありません。それに、若者の貯蓄率が高く、貯蓄額が伸びているとしても、上の世代のほうが所得も高く資産額も多いのです。問題の解決を若い世代に押しつけていないか、疑問を感じます。そもそも団塊世代の学生時代には若い世代はお金もなく貧乏なものだったのに(「神田川」の歌のように6畳一間、風呂なしトイレ共同で、荷物はほとんどない時代もあった)、今の若い世代には消費を求めてくるのはナンセンスです。
高額消費はそれぞれの世代が、今の自分の身の程にあったちょうどいい金額を設定すればよいのです。あるいは誕生日や記念日といった日にはゼイタクをし、日常はシンプルに暮らすような選択的消費を行えばいいのです。
そうしたバランス感覚を身につけないと、今まででもっとも豊かな時代に生きている若者はいくらお金があっても足りません。国が借金づけなのに、国民まで借金づけにしていいものでしょうか。
今の若い世代は、自分にちょうどいい消費のあり方を選択できる目も身につけつつあります。雑音など気にせず、バランスよく生活し、バランスよく貯蓄に励めばいいのです。
追記
ひとつ同意できる意見があるとすれば「資産の一部を投資に」という部分でしょうか。社会の充実と個人の資産の成長が同時に実現可能なリスク資産への投資は考えてみてもいいと思います。