鉄道/鉄道博物館

横浜の新名所「原鉄道模型博物館」(4ページ目)

伝説的な鉄道模型愛好家、原信太郎氏が収集・製作した鉄道模型や鉄道関連収集品を展示する「原鉄道模型博物館」が、2012年7月10日に横浜駅近くの横浜三井ビルディング2階にオープンした。日本と世界各国の膨大な鉄道模型1000両と巨大ジオラマが展示され、鉄道好きはもちろんのことそうでない大人から子供まで幅広く楽しめる空間となっている。

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

巨大ジオラマ(レイアウト)『いちばんテツモパーク』

いちばんテツモパーク

巨大な『いちばんテツモパーク』

扇形庫の蒸気機関車

扇形庫には世界の大型蒸気機関車が勢ぞろい

約310平方mの巨大ジオラマ(鉄道模型用語ではレイアウト)。線路は1番ゲージで、フランスのリヨン駅をイメージしたターミナル駅(駅舎だけでも5mの長さ!)とヨーロッパの街並みや風景の中を、ヨーロッパの車両のみならずアメリカや日本の車両が所狭しと走り回る。昼夜を再現したラインティングの移り変わりも必見で、特に夕闇・夜闇の中を前照灯と客席灯を点した列車が駆け抜ける姿はなんともノスタルジック。うっとりと見とれてしまう情景を生み出している。

解説

客車の窓に見立てた解説パネル群

ジオラマの脇にはオリエント急行の客車をイメージした壁面に、原模型鉄道に用いられる技術を分かりやすく解説したパネルが並ぶ。興味深かった箇所としては以下。

■鉄のレールと鉄の車輪によってリアルな走行音を実現

レールの継ぎ目を列車が通過する際の「ゴトンゴトン」という音は、鉄の重量と素材感でなくてはなかなか出ないそう。鉄は重く錆びやすいため難しい素材だが、丁寧なメンテナンスでカバーしているとのこと。

■「惰力走行」の実現

ブレーキをかけても急停止せず、スピードを落としてゆっくり停止するという「本物の動作」を、高度な技術を駆使して再現している。

架線から集電して走る電気機関車

架線から集電して走る電気機関車(ドイツのE10形)

■実物同様の架線集電

一般的な模型鉄道は線路から電気を取り込んで走る(蒸気機関車もディーゼル車両も外見はともあれ、電気で走る)ために、屋根上のパンタグラフはダミーで、架線も張ってないことが多い。しかし、原鉄道は本物同様架線からパンタグラフを使って集電している(メルクリンなどヨーロッパの鉄道模型には架線集電ができるものがある)。架線の張り具合によりパンタグラフが伸縮したりするので、それを眺めるのも興味深いだろう。


 
ずいぶんと力の入った解説コーナーであったため担当者に話を聞いたところ、「原氏の想いすなわち博物館のコンセプトとして、鉄道や鉄道模型そのものに対する興味はもちろん、その製作における『技術』や『テクノロジー』というものの面白さ・奥深さに触れるきっかけを与えたいという想いがある」そうだ。

ちなみに原氏オリジナル製作の車両は貴重品であるため、絶えず走り回っているわけではなく電光掲示板と音響でのアナウンスのもと1時間に数回程度のみ登場する。常時走っているのはドイツのメルクリン社の量産品であるため、ドイツ形車両が目立つ。ある意味、メルクリン社製品の堅牢さを実証しているとも言える。
黄色いSL96形

異彩を放つ黄色の蒸気機関車96形(ドイツ)

メルクリン社の蒸気機関車は、HOスケールの車両同様、ゾイテ(Seuthe)式という煙突に専用の液体を垂らすことによって本物のようにイミテーションの白煙を出しながら走る装置を内蔵しているのだが、当博物館は公の施設であるので、消防法などの規制により、蒸気機関車が煙を出すことはできず、その点については残念である。


 
ED16

貨物列車を牽引するED16形電気機関車

日本型では、旧国鉄のED16形電気機関車が注目すべき完成度を誇るモデルなので、レイアウトを走行していたら注目してみよう。個人的には、学生時代住んでいた家の近くで、石灰石を満載した貨物列車を牽引して、ひっきりなしに行きかっていたのをよく見かけた機関車なので懐かしい。




横浜ジオラマ

地元ならではの横浜ジオラマ

また出口付近にはHOゲージによる横浜ジオラマがあり、蒸気機関車時代から現代までの横浜を、町並と列車車両の移り変わりとともに再現しているコーナーがある。これまたライティングによる昼夜が再現されており、鶏が鳴く、始発ベルが鳴る、学生が登校し始める、など音響面の作りこみも素晴らしい。


 


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