巨大ジオラマ(レイアウト)『いちばんテツモパーク』
約310平方mの巨大ジオラマ(鉄道模型用語ではレイアウト)。線路は1番ゲージで、フランスのリヨン駅をイメージしたターミナル駅(駅舎だけでも5mの長さ!)とヨーロッパの街並みや風景の中を、ヨーロッパの車両のみならずアメリカや日本の車両が所狭しと走り回る。昼夜を再現したラインティングの移り変わりも必見で、特に夕闇・夜闇の中を前照灯と客席灯を点した列車が駆け抜ける姿はなんともノスタルジック。うっとりと見とれてしまう情景を生み出している。ジオラマの脇にはオリエント急行の客車をイメージした壁面に、原模型鉄道に用いられる技術を分かりやすく解説したパネルが並ぶ。興味深かった箇所としては以下。
■鉄のレールと鉄の車輪によってリアルな走行音を実現
レールの継ぎ目を列車が通過する際の「ゴトンゴトン」という音は、鉄の重量と素材感でなくてはなかなか出ないそう。鉄は重く錆びやすいため難しい素材だが、丁寧なメンテナンスでカバーしているとのこと。
■「惰力走行」の実現
ブレーキをかけても急停止せず、スピードを落としてゆっくり停止するという「本物の動作」を、高度な技術を駆使して再現している。
■実物同様の架線集電
一般的な模型鉄道は線路から電気を取り込んで走る(蒸気機関車もディーゼル車両も外見はともあれ、電気で走る)ために、屋根上のパンタグラフはダミーで、架線も張ってないことが多い。しかし、原鉄道は本物同様架線からパンタグラフを使って集電している(メルクリンなどヨーロッパの鉄道模型には架線集電ができるものがある)。架線の張り具合によりパンタグラフが伸縮したりするので、それを眺めるのも興味深いだろう。
ちなみに原氏オリジナル製作の車両は貴重品であるため、絶えず走り回っているわけではなく電光掲示板と音響でのアナウンスのもと1時間に数回程度のみ登場する。常時走っているのはドイツのメルクリン社の量産品であるため、ドイツ形車両が目立つ。ある意味、メルクリン社製品の堅牢さを実証しているとも言える。
メルクリン社の蒸気機関車は、HOスケールの車両同様、ゾイテ(Seuthe)式という煙突に専用の液体を垂らすことによって本物のようにイミテーションの白煙を出しながら走る装置を内蔵しているのだが、当博物館は公の施設であるので、消防法などの規制により、蒸気機関車が煙を出すことはできず、その点については残念である。
また出口付近にはHOゲージによる横浜ジオラマがあり、蒸気機関車時代から現代までの横浜を、町並と列車車両の移り変わりとともに再現しているコーナーがある。これまたライティングによる昼夜が再現されており、鶏が鳴く、始発ベルが鳴る、学生が登校し始める、など音響面の作りこみも素晴らしい。