相続税を納める人はどのくらい増えたか?
納税者はどのくらい増えたか?
先月発表された国税庁の「平成22年分の相続税の申告事績」のから考察してみましょう。
■平成21年(改正前)
・平成21年の死亡者数(被相続人の数):1,141,865人
・上記に対する納税がある申告件数(被相続人の数ベース):46,438件
・課税割合:4.1%
■平成22年(4月以降改正)
・死亡者数:1,197,012人
・申告件数:49,733件
・課税割合:4.2%
まず自然増を考慮すると(死亡者数が増えている)、平成21年の課税割合を適用すると改正がなかった場合の平成22年分の申告件数は48,680件になります。
1,197,012人×46,438件/1,141,865人=48,680件
次にその件数を平成22年の実際の申告件数から引くと、改正による申告増加分は1,053件となります。
49,733件-48,680件=1,053件
そして、4月からの改正のため1~3月の3ヶ月分も改正があったものとして考慮すると、通年で1,404件=3%の増加となります。
1,053人×12月/9月=1,404件
1,404人/46,438件=3%
小規模宅地等の特例の改正により、これまで「申告義務あり・納税なし」の人が「納税あり」になったことで、申告(課税)割合が3%増加したことが分かりました。
首都圏でどのくらい申告件数が増えたか?
これを東京国税局管内(東京都、神奈川県、千葉県、山梨県)でみるとどうなるのでしょうか? 東京国税局発表の同資料から考察してみましょう。■平成21年(改正前)
・死亡者数:218,454人
・申告件数:14,485件
・課税割合:6.6%
■平成22年(4月以降改正)
・死亡者数:231,280人
・申告件数:16,101件
・課税割合:7.0%
自然増を考慮すると平成21年の課税割合を適用して15,335件となり、9ヶ月分の増加が766件、通年だと1,021件で7.0%の申告件数の増加となりました。
231,280人×14,485件/218,454人=15,335件
16,101件-15,335人=766件
766件×12月/9月=1,021件
1,021件/14,485件=7.0%
小規模宅地等の特例の改正により、これまで「申告義務あり・納税なし」の人が「納税あり」になった人増えたことで、首都圏では申告(課税)割合が7%増加することが分かりました。
また小規模宅地等の特例の改正は、東京国税局管内で特に影響が大きかったことも分かります。納税がある申告件数の増加の東京国税局のシェアは73%(1,021件/1,404件)にもなります。これも地価が高いためです。
小規模宅地等の特例の改正の影響はこれから
これまでは小規模宅地等の特例の改正によって、納税がなかった人が納税が発生したケースを確認してきました。しかしもともと納税がある人のうち、どのくらいの人が増額になったのか? 改正による増税がどのくらいあったのか? は分かりません。さらに、小規模宅地等の特例の適用は、配偶者と子の相続の場合には、子が適用を受けた方が有利です。これは、配偶者は配偶者軽減により遺産の1/2(取得財産が1億6000万円)までは相続税がかからないためです。しかし、改正により、自宅については、配偶者しか適用を受けられないことがあり、仕方なく配偶者取得にしたケースも多々見受けられます。この状況では、その配偶者か亡くなったときには、Aさんのように自宅を所有していると、適用が受けられなくなってしまいます。
従って、今回の見てきた申告割合の増加は、改正の影響の一部でしかありません。
現在、国会で審議されている「社会保障と税の一体改革」の中に相続税の基礎控除引き下げによる相続税の増税も含まれています。この増税も加わると小規模宅地等の改正の影響はもっと大きくなることでしょう。