築年数?それとも見た目?
まずは古民家を定義づけてみよう
鎌倉を初め、小京都、古都と言われるような街には古い建物が残っている。また、鎌倉では景観を守るための規制があり、街並みが大きく変わることは少ない
最初に古民家とはどのくらいの古さの建物を指しているか、それを明確にしておきましょう。厚生労働省認可財団法人職業技能振興会が創設した古民家鑑定士なる資格が定義する古民家は築50年以上だそうですが、街中で普通に住んだり、利用することを考える場合には必ずしも、それにこだわることはないだろうと思います。そこで、この記事では違う定義をします。古都鎌倉で古民家の再生、活用に取り組む
鎌倉古民家バンクの島津健さんによると「鎌倉は関東大震災で大きな被害を受けたため、残されているのはそれ以降の建物が中心。しかも、大正時代の鎌倉は別荘地だったので、残されている建物はお金をかけて作られた、それなりのお屋敷。たまに広い敷地に茶室があるなどすてきな物件が出てきますが、賃料は20数万円から。一般の人が借りる、買うということを考えると、もう少し時代の下った戦争前後あるいは戦後すぐの建物と考えるのが現実的じゃないでしょうか」。
大正13年頃に建てられた旧安保小児科医院。鎌倉市の景観重要建築物として指定、保護されている
実際、鎌倉には大正から昭和初期の建物も残されていますが、そのいくつかは景観重要建築物として指定、保護されています。文化財となっているわけで、普通に居住するとしたら、それ以降の住宅が対象ということになりそうです。
入谷プラスカフェの窓辺。壁、窓の枠、桟などに木が使われており、暖かい雰囲気が漂う
もうひとつ、ポイントになるのは窓枠です。今の住宅ではアルミサッシが一般的ですが、どうも、あれがあると古民家という雰囲気からは遠ざかる印象があります。古民家の良さが木の温もり、時代を経てきた雰囲気だとすると、工業生産品であるアルミサッシはそれを邪魔します。
築50年、商店だった建物を借りてカフェとして再生。週末には行列ができるほどの人気店
前述の島津さんもご自身が古民家を選ぶ時の基準として窓枠がアルミサッシでないことを挙げていらっしゃいます。考えてみると、アルミサッシが普及したのは高度経済成長期。住宅作りが職人さんの手から工場へ、効率重視に変わった時代です。「木のような自然素材は経年変化で風合いを増しますが、新建材は劣化するだけ」(入谷で築50年の店舗兼住宅を改装、
入谷プラスカフェを経営する今村ナオミさん)と考えると、古民家に該当しそうなのは昭和は昭和でも、昭和40年くらいまでに、職人さんが作った住宅ということになりそうです。
ただ、限られた予算で探す時にそこまで厳密に考えると、該当する物件がなくなってしまいますから、その辺は柔軟に。自分で思うレトロな雰囲気に合致するか程度で考えたほうがいいかもしれません。
続いて
古い街並みが残っていそうな場所を見て行きましょう。