ワールドカップより過酷な五輪の環境

ロンドン五輪サッカーの登録メンバーはたった18名。なでしこジャパンの選手同士の競争は熾烈を極める

ロンドン五輪サッカーの登録メンバーはわずかに18名。なでしこジャパンのチーム内競争は熾烈を極める

7月26日の開幕まで3カ月強となり、「オリンピック」という言葉がかなり身近になってきた。世界各地での予選や国内選考会が活発化しているが、なでしこジャパンは昨秋のアジア予選ですでに五輪出場を決めている。現在のテーマはふたつだ。

ひとつ目は、メンバーの絞り込みにある。ワールドカップの登録メンバーは21人だったが、五輪は18人である。しかも、ワールドカップは中3日で試合が行なわれたが、五輪は中2日の強行スケジュールだ。ロンドンで表彰台へのぼるには、中2日で6試合を戦い抜かなければならないのである。

ワールドカップより少ない人数で、タフな日程を乗り越えるには何が必要か。連戦を戦い抜くための基本的な体力はもちろん、出場停止やケガなどへの耐性が強く求められる。ひとりの選手が複数のポジションをこなすことで、人数の少なさを補っていかなければならない。

厳しいサバイバルとも言える五輪の戦いを想定して、佐々木監督はチームのベースとなる4-4-2のシステムのなかで、様々な組み合わせをテストしてきた。先のキリンチャレンジカップでも、複数のバリエーションで戦った。そのうえで、誰が出てもチームの水準が保たれるようになってきた。

アメリカやドイツと対戦した2月のアルガルベカップは、大黒柱の澤穂希抜きで準優勝を勝ち取った。アメリカと1対1で引き分け、ブラジルを4対1で退けた今回のキリンチャレンジカップでは、澤に加えて最終ラインを牽引する岩清水梓も欠いていた。攻守の軸がいないなかで、大会優勝を勝ち取ったのである。チームのベースアップがはかられているのは、こうした結果が裏付けている。


宇津木の柔軟性がカギを握る!

チームの中心は依然として澤であり、澤からキャプテンを譲り受けた宮間あやである。最前線で攻撃の起点となる永里優季や、代表ではサイドアタックを担う大野忍らも、世界がリスペクトする日本のパスサッカーを担っている。

個性豊かなタレントが揃うチームにおいて、ロンドン五輪のキーパーソンには宇津木瑠美を指名したい。

DFラインとボランチでプレーできる彼女がいることで、佐々木監督は複数の選択肢を持つことができる。左ボランチで先発したブラジル戦では、最終ラインを巧みにサポートして守備に安定感をもたらし、コンタクトプレーに強さを見せつけた。

昨夏からフランスリーグのモンペリエでプレーする。「自分ではあまり、球際に強いとは感じていないんですけど」と本人は遠慮気味に話すが、相手のボールを奪うことはもちろん自分のボールを失わないことにおいても、この23歳は頼もしい。

「ボールを奪うタイミングは、外国人選手と普段やっているなかでおのずと身についたのでは」と続けるが、彼女自身が外国人としてプレーする日常が、世界基準の逞しさを身につけることにつながっているのだろう。

コンタクトプレーへの強さは、攻撃面でも生かされている。プレッシャーを受けてもしっかりとボールをつなげる展開力は見逃せない。「一瞬のチャンスを逃したくないし、それを避けてセーフティにやるのは自分の色ではない」と、言葉に力を込める。メダル獲得を念頭に佐々木監督が強調してきた「タテへの意識」を、彼女のプレーは体現している。

センターバックは熊谷紗希と岩清水、ボランチは澤と阪口夢穂と、宇津木のポジションには佐々木監督の信頼が厚い選手が並ぶ。だが、168センチの高さを持ち、稀少なレフティーという個性を加味しても、彼女が必要とされる場面は訪れるに違いない。同じモンペリエに所属する左サイドバック鮫島彩とのコンビネーションも、攻守においてチームの強みになっていくはずだ。

五輪へ向けてアピールを続けるのは、もちろん、宇津木だけではない。ワールドカップ優勝メンバーを脅かす新たなタレントが、続々と登場している。

ブラジル戦で優勝を決めるゴールをあげた21歳の菅澤優衣香は、佐々木監督に「今回のキャンプと試合でもっとも成長した選手」と言わしためた。若年層で飛び抜けた得点力を発揮してきた18歳の京川舞ら、若手の底上げは著しい。

激化するメンバー争いと並行して、なでしこジャパンはロンドン五輪へ向けた新たな武器を装備しつつある。現在のチームが取り組んでいる二つ目のテーマについては、次回の更新分で詳しく触れることにしたい。




※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。