E657系の車内
では、車内に入ってみよう。普通車は、通路をはさんで2人掛けシートが並ぶ(一部に車いす対応の一人掛けシートがある)。黒をベースにした落ち着いた座席で、柄のデザインがユニークだ。沿線にある霞ヶ浦のおおらかな湖面のうねりを表現しているとのことだ。シートピッチ(前の座席との間隔)が「フレッシュひたち」の車両より若干広がり、床は歩行音を小さくするゴム床の使用、空気清浄機設置、オゾン脱臭機の採用など、快適な乗車時間を過ごせるように、細かい点での気配りが感じられる。グリーン車は、普通車同様2人掛けシートが原則で、紫系の梅柄シートにラベンダー色の枕カバーと上品な雰囲気を醸し出している。床のカーペット、電球色光の間接照明もさすがグリーン車ならではの居住空間を演出している。
グリーン車(5号車)には、大型の車いす対応トイレがある。広々とした室内には、洗面台のほか、赤ちゃんのオムツ交換に便利なベビーベッド、ベビーチェアもある。
別室として、多目的室があり、気分が悪くなった人が横になって休息できるような組み立て式ソファーとなっている。車両ドア付近の壁にはAED(自動体外式除細動器)が搭載され、万一の場合に対応できる。
また、この付近の通路はギャラリーとしてゆとりの空間を演出。常磐線沿線の観光ポスターなどが掲出される。トイレの順番待ちや、気分転換などのときに落ち着いて過ごせるよう工夫されている。
ビジネスユースに対応する車内設備
常磐線の特急列車利用者は、観光客ばかりではなく、ビジネス客も多いのが特色だ。そうしたビジネスパーソンの需要に応えるため、WiMAXおよびWi-Fiを用いたブロードバンド環境を構築し、車内で快適にインターネットが利用できるようになった。座席にはパソコンを置けるテーブルのみならず、コンセントもある。但し、当初は、上野~水戸間の利用に限定され、全区間での使用は少し先になる見通しだ。特筆すべきは、コンセントがすべての座席にあることだ。新幹線など従来の車両では、コンセントは車端部の席を除いて、窓側の席だけに設置されていた。しかし、この車両ではコンセントの位置を、従来の壁の床に近い部分ではなく、肘掛アームの先端部(一部座席では肘掛アームの下部)に設置することで、全席への取り付けが可能になったのだ。パソコンやスマホの電池切れを心配することなく機器の操作ができるのはありがたいことだ。