改正点1:負担の緩和
まず1つめが負担の緩和。緩和と言っても、連帯納付義務自体が一部でも免除されると言うことではありません。単に税金の支払いが延滞した場合のペナルティが緩和されることに留まります。
これまで、Aさんが延納を払えなくなった時点から納付が完了するまで延滞税がかかっていました。延滞税は、最初の2ヶ月分が4.3%/年(※1)、その後は14.6%/年です。従って、連帯納付義務の履行の請求をされるころには、未納分だけでなく、延滞税もかなりの額になっています。これは、連帯納付義務者にとってかなり酷だということで、延滞税ではなく利子税になったのです。ちなみに利子税は、2.1%/年(※2)です。これにより、連帯納付義務者の負担が緩和されました。
しかし、連帯納付義務者には、納付期限(納付基準日)があります。これに遅れてしまった場合には、納付基準日以後の延滞税の納付が必要になるので注意が必要です。
※1:基準割引率(旧公定歩合)が0.3%の場合
※2:遺産の中で不動産等の割合が50%以上の場合(上記同様に基準割引率0.3%の場合)
改正点2:連帯納付義務の履行手続が法定化
連帯納付義務の履行を求めるときの手続が法定化されました。これまで運用上、通知等の手続きが行われていましたが、これが明確に法定化されました。
1.相続税の期限に連帯納付義務の通知
他の相続人に延納・物納の申請がある場合に、連帯納付義務がある旨の通知がされます。
2.滞納発生の通知
他の相続人について相続税が滞納が発生した場合に、相続税が完納されていない旨の通知がされます。
3.納付通知書
本来の納税義務者から納付がなく、また、納付の見込みもない場合には、連帯納付義務者に対し、納付すべき金額、期限等を記載した通知がされます。
4.督促状
3の通知から2ヵ月後までにその通知された金額が完納されない場合には、連帯納付義務者に督促状が送られます。
…と、以上のような手続きが法定化されました。
最後に:相続税の連帯納付義務への対策
以上のように、この連帯納付義務は、義務者とって非常に酷な制度です。きっと、納税義務者に対して激しい怒りを感じることかと思います。そこで、対策としては、遺産分割の際に、他の相続人が相続税を納められるのかどうかを確認しておく必要があります。延納や物納になるときは注意が必要です。納税のメドがきちんとできるまで遺産分割協議書に判を押さないぐらいの覚悟が必要です。