震災をきっかけに夫婦のこと、家族のこと、そして自分の生き方について見直した人は多かったはず。その結果、離婚という結論にいたるケースもありました
ところが、その一方で離婚相談の件数が増えたのも事実。私の相談所に訪れる人も震災前と比べると2割は増えた印象があります。
いったいなぜ、震災後に離婚相談が増えたのでしょう? 今回は、その理由を妻と夫の両方の立場からみていきたいと思います。
妻を心配してくれなかった夫
(ケース例)「自分の身の安全や、自分の食糧の確保が第一で、私を心配してくれる様子が見られなかったんです」と嘆くY子さんは結婚2年目の主婦。夫は普段から仕事人間だったといいます。当日は、なかなか電話がつながらなかったとはいえ、結局、Y子さんへの連絡はないまま。妻の心配をよそに、夫は会社の近くのホテルに泊まり、翌日の夜になってようやく自宅に電話をしてきたそうです。
「私のことが心配じゃなかったのかな、と思ったらショックで。この先、また何かあっても私は守ってもらえないんだろうな、と落ち込みました」というY子さんは、震災をきっかけに結婚の意味を考えはじめたのでした。
(考察)
震災後、夫婦間で価値観のズレを意識したという相談例は多かったように思います。自分のことばかりで、妻や家族を思いやれない夫に愛想を尽かして離婚にいたったケースもあります。
夫より子どもや自分の親を心配した妻
(ケース例)「無意識に、子どもと自分の親のことが頭に浮かびましたが、夫のことはずいぶん後になってから、『そういえば』という感じで……。そのとき『ああ、私はもう夫に対して愛情はないんだな』と実感しました」と語るのはFさんです。
Fさんと夫は、家庭内別居の状態が続いていましたが、子どものことを考えて離婚はとどまっている状態でした。ですが、震災をきっかけに愛する伴侶を見つけて新しい人生を歩んでいくことも選択肢のひとつかもしれない、と相談に来ました。
(考察)
震災をきっかけに、今まで向き合おうとしなかった自分の正直な気持ちにはじめて気づいた、というパターンもあります。震災後の離婚相談は、感情面を重視するせいか、男性よりも女性のほうが多いのも特徴です。
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