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相互厭人的読書生活4(3ページ目)

ガイドの読書記録です。今回は2011年1月21日~25日まで読んだ本をとりあげます。青木淳悟「私のいない高校」、ペレーヴィン『チャパーエフと空虚』、今西乃子『犬たちをおくる日』など。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド


「かわいそう」では変えられない現実

犬たちをおくる日

モデルになったのは愛媛県動物愛護センター。金の星社刊。

年をとって涙腺がゆるみがちなので、動物本には身がまえてしまう。けれども、新聞記事で知ったこの本は手にとらずにはいられなかった。読んで良かったと思う。今西乃子の『犬たちをおくる日』

動物愛護センターで働く人々の日常を描いたノンフィクションだ。愛護センターの仕事内容、人間に捨てられた犬猫が“殺処分”されるまでを、写真付きで詳細に紹介している。職員が実名で登場するのが特徴だ。

犬を捨てに来た帰りに、里親募集中の小犬をもらおうとする男。捨てた犬が殺される前に、記念撮影をしにくる母子。身勝手な飼い主に怒り、死んでいく動物たちに対して「かわいそう」と泣くのは簡単だけれども、それだけでは現実は変わらない。

モデルとなった愛護センターの、丁寧で、根気強い啓蒙活動が印象に残った。一頭の犬が寿命をまっとうするまでにかかる費用など、具体的な数字を挙げて、捨てるよりも助けることが何倍も難しいことを伝える。犬は生き物だから、可愛いだけではなくて、排せつもするという、当たり前のことを理解してもらう。しかも、やさしい言葉で、笑顔をたやさずに。
だれかの責任追及をすることが、この施設の目的ではありません。その処分の実態を知っていただくことで、自分にできることは何かを、みなさんに考えていただきたいんです。
動物とかかわる仕事を選んでいる人は、たいてい、動物が好きだ。きっと、取材された施設以外のところにも、こういう努力をしている人はいるだろう。書かれていない人たちのことまで、想像が広がる本だった。
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