「かわいそう」では変えられない現実
モデルになったのは愛媛県動物愛護センター。金の星社刊。
動物愛護センターで働く人々の日常を描いたノンフィクションだ。愛護センターの仕事内容、人間に捨てられた犬猫が“殺処分”されるまでを、写真付きで詳細に紹介している。職員が実名で登場するのが特徴だ。
犬を捨てに来た帰りに、里親募集中の小犬をもらおうとする男。捨てた犬が殺される前に、記念撮影をしにくる母子。身勝手な飼い主に怒り、死んでいく動物たちに対して「かわいそう」と泣くのは簡単だけれども、それだけでは現実は変わらない。
モデルとなった愛護センターの、丁寧で、根気強い啓蒙活動が印象に残った。一頭の犬が寿命をまっとうするまでにかかる費用など、具体的な数字を挙げて、捨てるよりも助けることが何倍も難しいことを伝える。犬は生き物だから、可愛いだけではなくて、排せつもするという、当たり前のことを理解してもらう。しかも、やさしい言葉で、笑顔をたやさずに。
だれかの責任追及をすることが、この施設の目的ではありません。その処分の実態を知っていただくことで、自分にできることは何かを、みなさんに考えていただきたいんです。