持ち歩くための万年筆用ペンケースが難しい訳
T・MBH「懐菱 ペンシース」左/2本用800(2万2000円)、中/2本用400(1万9000円)、1本用400(1万4000円)
前にもガイド記事で書いた事ですが、少ない本数を入れるためのペンケースは入れるペンのサイズよりも、かなり大きくなってしまいます。それをアイディアと技術でコンパクトに仕立てたペンケースは、どれも名作と呼べるものになっています。例えば、ヤマザキデザインワークスの二本刺しのペンホルダーだったり、rethinkの3本挿しペンスリーブだったり、cyproductsのペンケース(4冠あり)だったりします。名作ペンケースは、そこに入れるペンを考えるだけでも嬉しくなるし、仕事の効率も上がるような気がします。
そんな名作に新たに加わったとガイド納富が思えるペンケースを見つけました。それは、T・MBHの「
懐菱 ペンシース」。薄く、強く、美しい革製品を究めようとするブランド「懐菱」は、革小物のデザイナーであり職人でもある岡本拓也氏が新たに立ち上げたもの。そのコンセプト通り、ペンシースも、まるで懐に忍ばせたナイフのように薄く、しかしペンをしっかり守る強靭さと、大人の持ち物として相応しいルックスの製品になっています。その完成度の高さは、さすがT・MBH(TAKUYA MAID BY HAND)です。
実際、万年筆用のペンケースは、中のペンを守る要素が強くなるので、コンパクトに仕上げるのは難しいため、基本的に万年筆用のペンシースは1本挿しがほとんどです。上記の名作ペンケースも、その多くは万年筆にも対応しますが、基本はボールペンを中心にした汎用タイプで、大きめの万年筆は入りません。
コンパクトに仕上げるために柔らかい革を使っているため、ペンをガードするという感じにもなりません。もちろん、その分実用性が高くなっていますから、どちらを優先するかと云った程度の問題です。そんな選択の中で「懐菱 ペンシース」は、万年筆のための堅牢性とコンパクトを両立させる試みの一つなのではないかと思います。
入れるペンとほとんど大きさが変わらないケース
この2本の万年筆が、ほとんどサイズが変わらないように見えるペンシースにキレイに収まる
「懐菱 ペンシース」は、1本用、2本用400、2本用800の三種類、黒とワインの二色で展開されています。400、800という番号は、それぞれペリカンのM400が二本、M800が二本入る、という意味です。つまり最初から万年筆用として設計されているのです。ガイド納富は、パイロットの「キャップレス」を2本、400用に入れて使っているのですが、このキャップレスのような、形に癖のある太めの軸の万年筆が、これだけのコンパクトなサイズに収まる事が、使っていても不思議です。革の収縮とステッチによる中腹の膨らませ具合が絶妙だからこそ可能な、省スペース性なのです。
2本用ペンシース800に、パーフェクトペンシルを入れてみた。このように上を捲って内部にアクセスする事もできる
それは、例えば800用にも言えます。何と、パーフェクトペンシルが二本、普通に収納できます。あの、キャップ部分と本体の太さが極端に違い、しかも、キャップ部分がやたらと太くて長いパーフェクトペンシルは、それが、シルバータイプであろうと、UFOであろうと、ペンケースにはとても収めにくいものだったのです。しかし、「懐菱 2本用ペンシース800」だと、上手く収まり、出し入れもスムーズ。元々、太さがある万年筆をすっぽりと収納できるように作られているから可能な事なのでしょう。
800、400、それぞれに万年筆を2本入れた状態。膨らみも目立たず、このまま胸ポケットに入れられるほど
使っているうちに、ケースの形が入れているペンに合わせて変化していき、すぐに、とても出し入れがスムーズなのに、逆さに振っても落ちない、堪らないフィット感になっていくのも、このペンシースの特徴。まるで、最初から専用に作ってもらったかのように、入れているペンにぴったりになっていきます。サイドを少し押してやるとスペースができ、ストンとペンを出し入れ出来ます。上部を捲って出し入れしてもOK。使う人の自由度が高いのも、このペンシースの特徴ですね。
次のページでは、こちらのペンシースのクオリティの高さを証明します。