ゆかりの地を走る「寅さん」電車
国民的ヒーローだった映画「男はつらいよ」シリーズの主役フーテンの寅さん。生まれも育ちも東京の下町、葛飾の柴又だが、そこを走る鉄道が京成電鉄金町線である。最近になって、味も素っ気もなかった車両に、沿線の観光資源として寅さんのイラストを描くことになった。2編成ある電車をすべて寅さんというのも芸がないと思ったのか、葛飾のもうひとつの人気キャラクターである漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(通称「こち亀」)の「両さん」と一本ずつデビューさせた。
金町線は、本線の高砂と金町を結ぶ単線の短い路線で唯一の中間駅である柴又で電車の行き違いをする。「寅さん電車」と「こち亀電車」が柴又で行き違うと駅は賑やかな雰囲気に包まれる。
ラッピングは、ドアの両サイドの戸袋と呼ばれるドアと窓の隙間に控えめに貼られているだけで、前面には何もない。地味だが、全線乗っても五分ほど。柴又までだったら、高砂から乗っても、金町から乗っても一駅二分ほどで降りなければならないから、電車がどのようなものであれ、気づかない人も多いかもしれない。
キャラクターをラッピングした車両というのは、外見は奇抜だけれど、車内は、普通の、通勤型車両であることも多い。だからこそ、車内にちょっとした仕掛けがあると嬉しくなるのだが、それは車窓の楽しみとは違った感興をもよおすものであろう。