古民家/古民家探訪

小説家が暮らした武蔵野の洋館「山本有三記念館」

東京・三鷹市に小説家の山本有三が暮らした家が保存されています。家族とともに約10年過ごした洋館は、建物の前後に広い庭のある緑豊かな環境に建つ住まいでした。今回は、この建物を紹介しましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

武蔵野の緑豊かな住宅地に残る洋館

JR中央線の三鷹駅南口より、玉川上水沿いに整備された「風の散歩道」をしばらく歩くと、三鷹市山本有三記念館があります。この建物は、小説家の山本有三が戦前、約10年間家族とともに暮らした家です。
外観

この建物が建築された大正の終わりから、昭和にかけて流行したというスクラッチタイルが外壁に使われています


建物は地下1階、地上2階建ての英国風で、どっしりとした印象の外観です。木造とRCの混構造で、基礎や外まわりの一部には大谷石が使われています。すでに、築80年を超える建物ですが、三鷹市の文化財に指定され、手を入れられていることもあり、竣工当時の趣を今も残しています。

設計・施工会社不詳の建物

実はこの建物は、山本有三が建てた家ではありません。施主は、当時商社の役員だった清田龍之助という人物で、建物が1926(大正15)年に登記されたことはわかっているのですが、設計者や施工会社については、はっきりとはわからないそうです。
応接間

1階の応接間。この部屋の暖炉には煉瓦が使われています

有三がこの家を手に入れたのは1936(昭和11)年のこと。小説の執筆に適した静かな環境に建つこのモダンな洋館を気に入り、家族とともに引っ越してきました。ここで暮らすようになると、自宅の一部を「ミタカ少国民文庫」として近所の子供たちに蔵書を開放したり、テラスで朗読会を開くなど、生活する場所としてだけでなく、公的な場所としての役割も果たしていたようです。山本有三は、戦後、進駐軍に接収されるまでこの館に住んでいました。

次ページでは、建物の細部を見ていきましょう。
  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます