雑貨/古道具・アンティーク

下北沢ENSYU 鈍い輝きの古道具と革道具

西荻窪の古道具とオリジナル家具の店、無相創が新しいお店を作りました。ENSYU(エンシュウ)とは、小堀遠州から名付けたもの。無相創とはまた一味違う空間です。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

古道具と、それらを組み合わせたオリジナルのランプや家具を 製作・販売していた西荻窪の「無相創」が、 新しいお店をオープンしました。名前はENSYU(エンシュウ)。 場所は、下北沢と三軒茶屋のちょうど中間くらいに位置する、梅が丘通り 沿いです。どちらからもそれなりに歩きますが、 わざわざ訪ねたいと思う、魅力的な空間です。

店名は茶人・小堀遠州へのオマージュ

店内
静かに厳かに道具が並びます。
店の前を通りかかると、思わず立ち止まってしまいそうな、 ハッと心奪われる外観です。黒い鉄枠で囲まれた、全面ガラス張りの無骨な建物の真ん中に、 どっしりと鉄板の大扉がそびえています。 ガラスの向こうには、グレーの床に木の天井、 鈍い光を放つ、鉄、ガラス、陶器や革など、モノトーンカラーの 渋い道具がぽつぽつと並び、 廃墟のような、美術館のような、そして実験室のような、 やや幻想的な異空間が夢のようにぼんやりと存在しています。

元は麻雀屋だったという、築45年程の建物。 リフォームする前はとにかくボロボロで、 屋根はたゆんで歪んで、雨漏りが相当ひどかったとか。 基礎的な部分はプロの大工さんに頼みながらも、 できるところは自分たちも加わって、一緒に改修作業を行ったそうです。 「思った以上に大変でしたね。玄関の扉は、木の板を鉄で覆って作ったものなんですけど、 ものすごく重くって、大の男が4人、女性2人の計6人作業でした。 扉や鉄枠などは、将来的にはオーダーメイド商品として 販売できたらいいなとも思っているのですが、 今はそのために自分たちで実際に使ってみて、 検証しているところです。ここは実験空間でもありますね」。

店内の様子
無骨な中に、不思議な居心地のよさがあります。


店内に並んでいるのは主に日本の古いもの。器は幕末くらいのものも あったり、昭和初期の懐かしい家具がぽつんと置かれていたり。 シンプルでやや渋みがかった質感、自分の普段の生活に 取り入れられるもの、そしてインスピーレションも大切にものを選んでいるそう。

店名であるENSYUは、小堀遠州から取ったもの。 無相創のオーナー、ヨネハラさんの名前は 「マサカズ」で、これは江戸時代初期の茶人・小堀遠州の本名、小堀政一から取って、おじい様に名付けられた のだそう。遠州は、書画、和歌にも優れ、美術工芸にも造詣が深く、 さらに造園家であり建築家でもあった、類まれなる才能の持ち主。 遠州の暮らし全般にまつわる美意識は、ヨネハラさんのもの創りに対する姿勢にも 大きな影響を与えているのでしょうか。 また、ENSYUという音の響きは、縁集(縁で集う)、円周(全ては円く繋がる)など とも読めるので、それらの意味も込めて、この名前を付けることにしたそうです。

ディティール
右上の写真のアーチ型は、ベルギーの古い扉をリメイクしたもの。
左下の窓は、自宅である2階から下を覗けるように、天井に付いている。
右下の革皿はお会計用に手作りしたもの。ころんとした形が魅力。


次ページでは、アトリエの様子や作品をご紹介します。
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