雑貨/インテリア雑貨関連情報

島根県 邑南町 森脇製陶所

島根県と広島県の県境近くにある、奥深い森の中の小さな器のアトリエ、「森脇製陶所」を訪ねました。日々器とじっくり向き合い、まるで自然の中から生まれてくる雲のように、伸び伸びと大らかで素直な姿の器を作り続けています。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

道沿いに控えめな看板があります。右はアトリエの建物。

道沿いに控えめな看板があります。右はアトリエの建物。


森脇製陶所は、こんなところがまだ日本にあったのかと思うほど、とっても山奥にあります。島根県・松江からだと、車で2時間半くらい。道の駅瑞穂まで来たら、あと5分くらいですが、まわりの景色は緑ばかりで、なんの目印もありません。あまり目立ちませんが、道沿いに小さな小さな看板があるので、お見逃しなく。カーナビも信用できないそうで、HPに詳しい地図があるので、行く前にはしっかり確認しましょう。

ハイジの山小屋にいるみたいな、気持ちよい風景。

ハイジの世界にいるみたいな、気持ちよい風景。

アトリエは、深呼吸したくなるような、風の通る気持ちよい高台にあります。田畑の続くなだらかな丘の上。まるで物語の世界のようです。陶芸家の森脇靖さんは、生まれも育ちも島根県のこの近く。車で1時間も行けば広島市内へ入ってしまう、邑南町(おおなんちょう)という県境の静かな町です。松江の工業系の学校を卒業後、陶芸を始めるにあたり、自分らしい場所はやっぱりここ、と戻り、開窯しました。陶芸を始めてから、今年で10周年を迎えるとのこと。毎日の自然の風景が、森脇さんの作品にも大きな影響を及ぼしているようです。

窓からの緑がきれいな季節でした。

窓からの緑がきれいな季節でした。

北欧の山小屋のようなすっきりとした建物が、森脇さんのアトリエ。全て手造りで、数年かけて少しずつ、自分で建ててしまったそうです。ここには何にもないから、自分で造るしかないんですよね、と笑う森脇さん。入ってすぐは展示スペースで、窓から木漏れ日が差し込み、なんとも清々しい場所です。あまり数は多くないですが、静かに居心地良さそうに器が並んでいます。ここではときどき企画展を開催し、「陶話会」と名付けた作り手との交流も行っています。

ひとつひとつ丁寧に器が並んでいます。

ひとつひとつ丁寧に器が並んでいます。


森脇さんは子どものころからもの作りが大好きだったそうで、工業学校に通っていたとき、製品の一部だけを任せられるより、材料からお客さんの手に渡るまでの全てに関わりたい、と思ったことが、器づくりへのきっかけでした。
「器はいちばん人のそばにある道具、人と触れあう時間が長い道具だと思ったんです。使っていくうちに、その人の毎日が器に染み込んでいく、日々変化していく器は使い手の生活を映す鏡のような存在だと思います。そうやって愛着を持っていただける器をこの地で作りたい、と強く思いました」。

森脇さんの作る器は、全て島根県の地元の土や釉薬を使っています。白い釉薬は益田市で採れる益田長石、茶色は出雲の来待石が主成分です。自分が生まれ育った土地のものを使うことは、森脇さんにとって一番自然で無理のないこと。また、体に悪い影響のあるものなどは一切使用しておらず、安心して使えます。

素朴でありながら、シャープな潔さを感じる器

素朴でありながら、シャープな潔さを感じる器。


「自分の心の中から、自然に湧き上がってくるものをかたちにしたい」という森脇さん。デッサンなどはほとんどせず、日々窓の外に見える木の成長や雲の動き、変化していく空の色など、自然から感じ取ったものを自分の中に取り込んで熟成させ、作品に落とし込むような気持ちで作陶しています。
「小さいころからこの地で暮らしていますから、自分にとってものを作る一番の環境はここなんです。やっぱり、ここでしかできないと思う。この地の自然そのままを、器に反映させていけたらと思っています」。

写真上のお皿や花器は、ずっと求めていた自分らしいものが最近ようやくできてきた、と見せてくれたもので、自ら調合した新しい釉薬を使っています。白い器、と一言では言い切れない、独特な色と質感。写真では分かりにくいですが、近寄ってみると、異国の古代遺跡のような朽ちた風合いでもあり、薄い紫や茶がところどころにほんのり透けるようにも見えて、不思議な透明感があります。暗いところで見ると、ぼうっと発光しているようにも見えるそうです。

ポットの写真で、左のものは森脇さんもとても気に入っているかたち。和の空間にもしっくり馴染みますが、北欧やドイツなどにもありそうな、無国籍なデザインです。そして右側のポットはクラシカルなフォルムが素朴で好感を持てます。取っ手の部分は籐工芸家の長崎 誠さんが作っています。「花結び」という精巧で美しい、高度な技術を要する編み方を継承する唯一の人物で、伝統工芸士です。すくっとした清々しい姿の取っ手に似合う、落ち着いた品のあるポットです。

工房の様子と愛用の椅子。

工房の様子と愛用の椅子。


森脇さんはほとんどロクロで成型しています。なるべくロクロから生まれた自然のままのかたちでありたいと思い、削りはほとんどしていません。頭で考えるのではなく、体の中から出てくる感情を器に映すような気持ちでロクロを回しています。
上右の写真は作業に使っている椅子。丸太を切り出して、自分で作ったそうです。いつもこれに座っているそうで、使い込まれ、オブジェのような美しいかたちをしています。ちょっと座らせてもらいましたが、すっぽり収まって安定感があり、木の質感が柔らかく体に良い感じがしました。

松江のDOOR BOOK STOREでも見つけました。

松江のDOOR BOOK STOREでも見つけました。

森脇さんの器は、松江のDOOR BOOK STOREに少しだけ置いてあります。外国のアート書店のようなこの店の中に置いてあると、またちょっこし表情が変わり、海外の作家かと思うような、すらりとした独特の雰囲気を帯びていて面白いです。また、現在東京CLASKAで開催中の「トットリに行ってみつけてきたもの」展(2010年10月11日まで)にも森脇さんの器がいくつか展示されています。


森脇製陶所
島根県邑智郡邑南町岩屋1273-4
tel 0855-83-2177
http://www.morisei.net/
※オープン日はHPで確認を。オープン日以外の訪問時は7日前までに連絡をしてください。

DOOR BOOK STORE
島根県松江市上乃木1-22-22
tel 0852-26-7846
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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