- すでにB型肝炎ウイルスの感染リスクがある場合の対処法
- 日常生活での感染予防法
前者の感染リスクへの対処法は、医療機関で行う処置なので、知識として知っておけばいい内容です。まず医療機関で行う処置を説明し、後半で、日常的にできる予防法について解説します。
医療機関で行うB型肝炎の予防法
感染予防には、血液を洗い流す手洗いがとても重要です
■高力価HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)
HBV(B型肝炎ウイルス)の感染防御抗体(中和抗体)であるHBs抗体が多量に含まれるヒトの血漿を原料として特別に作られたガンマグロブリン製剤を、「高力価HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)」と呼びます。HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)は、筋肉内注射により投与します。HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を筋肉内注射した場合、HBs抗体は短時間のうちに血中に出現して、筋肉内注射後48時間でピークまで達するので、HBVによる汚染が発生した場合など緊急時の感染予防のために用います。
■B型肝炎ワクチン(HBワクチン)
HBV(B型肝炎ウイルス)の感染防御抗体(中和抗体)を生体に作らせる(免疫を獲得させる)ことを目的とするワクチンを「B型肝炎ワクチン(HBワクチン)」と呼びます。一般にHBワクチンは、接種はHBs抗原、抗体ともに陰性であることを確認した上で行います。1回目の接種の後、1ヵ月後と4~5ヵ月後、計3回の接種を行います。その1ヶ月後にHBs抗体検査を行ってワクチン効果の有無を確かめます。 HBVの母子感染予防の目的で新生児に使用する場合は、成人の1/2量を接種します。ワクチンによる予防は、中和抗体が作られる(免疫を獲得する)までに長期間を要することから、保健医療従事者などHBVに汚染されるリスクが高い集団にあらかじめ免疫を獲得させておく場合、すなわち「汚染前の予防」の目的、および長期間にわたり免疫状態を保つ必要があるHBVの母子感染予防などにその効果を発揮します。
B型肝炎ウイルスの母子感染予防
B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染予防は、高力価HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)とB型肝炎ワクチン(HBワクチン)とを組み合わせて用いることにより行います。予防のためのプログラムは、母親がHBe抗原陽性のB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)である場合と、HBe抗体陽性のB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)である場合とで多少異なります。HBs ヒト免疫グロブリン(HBIG)は出生後できる限り早期に(遅くとも48時間以内に)筋肉内注射することが必要です。その後、2ヶ月後、3ヶ月後、5ヶ月後にそれぞれワクチンを打ちます。この方法により、より感染のリスクが高いHBe抗原陽性の母親から生まれてきた子供の95~97%がキャリア化を免れるとの成績が得られています。HBVに免疫を持たない医療関係者等が、
HBV陽性の血液による汚染事故を起こした際などの予防
針刺しなどの汚染事故を起こした場合、まずHBs抗原、抗体のチェックをします。いずれも陰性であった場合、免疫グロブリンをできるだけ早く(遅くとも 48時間以内)に筋肉注射して感染を予防します。その後、より感染のリスクを減らすためにB型肝炎ワクチンを針刺しなどの汚染事故を起こした場合、まず HBs抗原、抗体のチェックをします。いずれも陰性であった場合、免疫グロブリンをできるだけ早く(遅くとも48時間以内)に筋肉注射して感染を予防します。その後より感染のリスクを減らすためにB型肝炎ワクチンを3回追加で打ちます。B型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)がするべき
他人へのウイルス感染予防
B型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)の方は、次のようなことに注意すれば、他人に感染させることはありません。- 献血をしない、臓器や組織を提供しない、精液を提供しない
- 歯ブラシ、カミソリなど血液が付着するようなものを他人と共用しない
- 血液が他に付着しないように、皮膚の傷を覆う
- 月経血、鼻血などは自分で始末する
B型肝炎ウイルスの家庭内での感染予防
家庭の日常生活の場でHBV(B型肝炎ウイルス)への感染予防のためには、以下のようなことに注意してください。- 血液や分泌物がついたものは、むきだしにならないようにしっかりくるんで捨てるか、流水でよく洗い流す
- 外傷、皮膚炎、鼻血などは、できるだけ自分で手当てをし、また手当てを受ける場合は、 手当てをする人に血液や分泌物がつかないように注意する
- カミソリ、歯ブラシなどの日用品は個人専用とし、他人に貸さないように、また借りないようにする
- 乳幼児に、口うつしで食べ物を与えないようにする
- トイレを使用した後は流水で手を洗う