契約者と保険料を払う人が異なる場合、
生命保険料控除はどうなる?
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料の一定額が、契約者(保険料負担者=納税者)のその年の所得から控除され、所得税と住民税の負担が軽くなる税法上の特典です。上限は「一般」、「介護医療」、「個人年金」それぞれで4万円(住民税は2万8000円)、合計12万円です。旧契約(平成23年12月31日までの契約分)も「一般」と「個人年金保険」があり、それぞれ最高5万円(住民税は3万5000円)が控除されます。
父親が契約者である保険の保険料を子どもが払うケースもあります。今回は、こんなケースで子どもが生命保険料控除を受けられるか、解説します。
保険金受取人が誰になっているかで決まる
まず「一般」、「介護医療」の控除が受けられる要件を確認しておきましょう。対象となる契約は「すべての保険金の受取人が契約者本人または配偶者、その他の親族である生命保険」です。「契約者本人」は、「保険料負担者」と読みかえられます。
生命保険料控除の対象になるかどうかは、保険金受取人が誰になっているかで、契約者が誰かは要件になっていません。したがって、保険金受取人が保険料負担者(つまり、子ども)またはその配偶者、その他の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)に指定されていれば控除を受けられます。
その他の親族の範囲は広く、それ以外の人を保険金受取人にしているケースはまずないと考えられるので、子どもが控除を受けられることになります。
契約者の名義を変更しよう
では、具体的にどんなケースがあるか、2つほど見てみましょう。●ケース1
・契約者=父親
(保険料負担者=子ども本人)
・被保険者=子ども
・死亡保険金受取人=父親
未成年のときに父親が子どものために保険をかけ、その後、子どもが社会人になったので保険料の支払いも含めて子ども本人に保険を引き渡すケースです。
●ケース2
・契約者=父親
(保険料負担者=子ども)
・被保険者=父親
・死亡保険金受取人=妻(母親)
父親が自分を被保険者にし、妻(母親)を死亡保険金受取人にした契約を、父親に保険料負担能力がなくなったため子ども本人が負担するケースです。
どちらのケースも、保険金受取人は保険料負担者である子どもという6親等内の親族なので、子ども本人が生命保険料控除を受けることができます。
ですが、父親の保険料引き落とし口座に入金しているだけでは、子ども本人が払っていると認めてもらうのは難しいかもしれません。やはり、契約者の名義と保険料引き落とし口座を子ども本人に変えたほうがいいでしょう。
保険金受取人の変更も忘れずに
その際、死亡保険金受取人の名義も変更しましょう。ケース1は子どもが未婚なら父親のままでOKですが、結婚していたら(結婚したら)配偶者に変えます。子ども本人に万一のことがあったとき、死亡保険金を配偶者が受け取れるようにするためです。また、死亡保険金受取人は配偶者のほうが税金面で有利という理由もあります。ケース2は、子ども本人に変えましょう。妻(母親)が死亡保険金受取人の場合は贈与税、子ども本人の場合は所得税(一時所得)の対象になり、税金面では所得税のほうが有利だからです。
保険料控除を受けるには、会社員は11月頃に会社から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、10月頃に保険会社から送られている「生命保険料控除証明書」と一緒に提出します。
書類を出し忘れた会社員は、翌年、確定申告すれば所得税の還付が受けられます。自営・自由業者は、翌年の確定申告で保険料控除を受けます。
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