このサイトでは「日本の家が短命なワケ」や「家の寿命32年されどローン35年」などの記事で、日本の戸建て住宅の寿命の短さをお伝えしてきました。反面、皆さんが住宅に期待する耐久性は、当サイトの「あなたの一票」の投票結果では、40年以上となっています。
どこか懐かしい感じのするOさんの家。幸いこのあたりは防火指定になっていないので、外壁は板壁で仕上げられたそう |
古民家らしい太い梁が開放的な吹抜けの上に渡されています。シーリングファンは、換気や通風にかなり有効だそうです |
趣のある温泉宿といった落ち着いた雰囲気の2階の居室。 |
では、実際に100年以上の寿命があって、そこからさらに住み続けることのできる住宅があったら、あなたは住んでみたいと思いますか? 実は、そんな住宅があるのです。
我慢しながら暮らすのは意味がない
千葉県松戸市にお住まいのOさんの家は、新潟県にあった築100年の古民家を再生した住宅です。でも、よくある古民家と異なるのは、現代の住宅に使用されているのと同様の設備・仕様が組み合わせられている点です。古民家を住宅にするには、単に解体して、別の場所に建てる「移築」ではなく、「再生」するのがいいと思うのですが、どのように再生するのかがポイントだと思います。というのは、リサイクルという観点のほか、情緒や趣味性などの気持ちだけで古民家を取り入れるのは難しい側面があります。冬の寒さや夏の暑さを我慢したり、生活するうえで大きな不便を強いられるのであれば、愛着を感じる古民家でも住まいとしては適当ではないでしょう。さらに、耐震性も気になると思います。
果たして、Oさんの家はどんな住宅なのでしょう? まずその成り立ちからご紹介しましょう。
古民家だけれど新しい家
Oさんの家はまだ築3年に満たない新しい住宅です。ところが、外観は周囲の新築住宅とはかなり違います。切妻屋根に漆喰と板壁で仕上げられた外壁など、いかにも古民家らしいものです。 室内に一歩足を踏み入れると、目をひくのは直径が40~50cmもある梁。現代の新築住宅では、見かけることのできないほど、黒々とした太い梁が家の中を貫いています。この梁は解体された築100年の古民家で使われていたものだそうです。そのほか、柱の一部にも古材が使われていて、かき込みがみられます。また、室内の建具の多くも古民家から調達されていて、和室の引き戸や、蔵戸だったという玄関の建具なども、いかにも古民家らしい重厚なイメージになっています。もともと古民家が好きだったとおっしゃるOさんは、家づくりを考えたとき、古民家を再生して、自宅にすることを決めました。しかし、単に古い家を移築するのではなく、「日本民家のよさを生かしながら現代生活にも適応したつくり方」を目指して古民家を再生させることを考えたそうです。そこで、雑誌やwebで研究したり、情報を集めたりして、古材と新材を上手に組み合わせた「現代的な古民家」を建ててくれる工務店と巡り合い、この家ができ上がったのです。Oさんの家の骨格には築100年の古民家に使われていた古材が使われていますが、古民家を移築して再現するわけではないので、適材適所に新しい部材を使っているようです。例えば、室内の通し柱など、構造的に一部には杉の新材を使い、キッチンや浴室には、一般の住宅と同じような最新の設備機器が採用されています。
木という材料にこだわる
家づくりにあたって、Oさんは鉄骨やコンクリートではなく、木の家にしたいと思ったそうです。その理由のひとつは、木材を製造するときのエネルギーに関係があります。Oさんはいろいろ調べた結果、住宅材料の中で、製造するときのエネルギーが一番少ないのが木材だという結論にいきついたといいます。さらに、木は大切に使えば長く使え、リサイクルしたり、再利用できる材料でもあります。実際にOさんの家の骨格に使われているのも、その多くは、100年以上前に新潟に建築された家に使われていた部材だそうです。
もうひとつの理由は、木という素材が魅力的だからだそうです。木は調湿・吸湿する性質があり、呼吸する素材であり、住宅の部材として、非常に心地よいものだと感じているということです。実際に、構造材として木を使わなかったとしても、床などに木を使った家は多いですね。これは、やはり木に心地よさやあたたかさを感じている人が多いからでしょう。
さて、Oさんの家が「現代的な古民家」だといえるのは、古材と新材を組み合わせたという点だけではありません。見た目だけでは、ちょっとわかりにくい性能についても、「現代的」なんです。どんなことのなのかについては、次のページで紹介しましょう。