古民家/古民家探訪

江戸後期の生活を偲ばせる旧安藤家住宅(2ページ目)

東京都世田谷区にある次大夫堀公園民家園。ここで見学できる旧安藤家住宅は、江戸時代後期の建物を移築したもの。江戸時代から明治にかけての名主の家の暮らしを紹介しましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド


内向きの座敷も

//imgcp.aacdn.jp/img-a/800/auto/aa/gm/article/2/8/9/7/9/0912163.jpg
内向きの座敷。広さは10畳です。玄関や広間、座敷など、どの部屋にも移動しやすい位置にあります。赤い壁や印象的です
「げんかん」を入り、仏間でもある「なかのへや」を通り抜けると、内向きの座敷があります。ここには文机や燭台などが置かれていて、当時の生活の様子を想像することができます。

奥座敷のほかに、内向きの座敷があるあたりは、さすが名主のお屋敷といったところでしょうか。

庭を眺められる奥座敷

内向きの座敷のさらに奥へ進むと、奥に12畳と、8畳の座敷があります。

//imgcp.aacdn.jp/img-a/800/auto/aa/gm/article/2/8/9/7/9/0912184.jpg
写真奥の上座敷は8畳、手前の部屋は12畳の広い座敷です
8畳の上座敷は書院造の違い棚と、床の間のある格式の高い来客用のスペースです。南側に縁廊下が続き、内庭を眺めることができるので、明るく開放感のある部屋となっています。

また、一番奥に来客専用の便所が設けられているのには、ちょっと驚きました。

約30畳もある大きな土間

安藤家では、小作経営による農業のほかに、養蚕や糸繰りをしていたそうです。台所に隣接した「なんど」と呼ばれる板敷きの部屋で、住み込みの人たちが寝起きしていたといいます。

//imgcp.aacdn.jp/img-a/800/auto/aa/gm/article/2/8/9/7/9/0912545.jpg
広い土間は雨の日の作業場としても使われていましたが、餅つきをすることもあったようです
また、天井が高くて、広い土間があり、かまどや、座って作業をする座り流しなどが見られました。土間は外から履物を脱がずに出入りできるので、雨の日に藁をうつなどの作業場として重宝したことでしょう。

江戸時代中期から大正時代まで、土間に隣接した「いとば」では、繭を煮て生糸を紡いだそうです。

古い住宅を見学することは、その建物が建築された時代の生活を知ることでもあります。江戸や明治時代の住宅に、時折、見られるのは来客と家族が出入りするスペースを明確に分けた設計です。このような間取りを見ていて、現代人の私たちは「ハレ」と「ケ」の区別というものを少し忘れてしまっているような気がしました。もしかしたら、住宅のつくり方においても、見直したほうがいい考え方なのではないでしょうか。

旧安藤家住宅(次大夫掘公園民家園)
住所:東京都世田谷区喜多見5-27-14 次大夫堀公園民家園内
交通案内:小田急線 成城学園前駅より徒歩約15分、
小田急線・成城学園前駅南口より 東急田園都市線・二子玉川駅行きバス「砧農協前」または「次大夫堀公園前」下車 徒歩約2分
電話:03-3417-8492
定休日:毎週月曜(月曜が祝日にあたるときは、その翌日)、年末年始(12月28日~1月4日、ただし、元旦は特別開園)
住宅の見学時間:9時30分~16時30分
入園料:無料
駐車場:33台あり(有料/30分100円)
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます