イリヤプラスカフェの写真
築50年の建物の良さをいかしたリノベーション。薪ストーブで燃えさかる炎は見飽きることがありません。

つくりこみすぎない魅力、下町の空気感

「薔薇の花が大好きなんです」とオーナーの今村ナオミさんは気さくな笑顔で話してくれました。幸運なことに遠いご親戚が薔薇園を営んでおり、お店への定期的な配送を依頼しているのだそう。
この日もさまざまな品種の薔薇が、カフェのそこかしこを優しく無造作な風情で彩っていました。

そう、息をこらしてかっちりとつくりこむようなしつらいは、イリヤプラスカフェには似合わないのです。自由な余白を残して、あとはどうぞ使う人のお好きなように--もしかしたらそれが、気取りのない下町らしさなのかもしれません。

イリヤカフェの写真
中央の大きなテーブルには可憐な色あいのスプレーバラ。

古い一軒家をリノベーション

昔ながらの小さな個人商店が点在する入谷は、取材中にも町内会の人が回覧板を持ってやってきたり、大きな猫が日なたで泰然自若とは何かを考察していたりと、生活の温度が感じられる町。そんな風情を好んで近くに暮らしていた今村さんは、路地の一角に佇む古い一軒家をリノベーションし、2008年にカフェを開きました。

自転車で通りかかるたびに心惹かれていたという、築50年になる木造の二階建て。いつも閉まっているシャッターがたまに半分ほど上がっていることがあり、そのすきまから奥に長く伸びる間取りや、ドライフラワーでいっぱいの空間が見えて、ますます想像をかきたてられたのだそう。
イリヤカフェの写真
お店の入口にはテラス席が設けられています。猫観察の特等席。

2005年のある日、その一軒家に「貸家」の貼り紙が。今村さんはイベントスペースとしての使用を考えて借りることを即決したものの、仕事が忙しくてさほど有効活用しないままに2年が経過してしまいます。

そして2008年、契約更新を機に「この家をもっとオープンな場所にする責任が自分にあると感じて」、歳月を重ねてきた建物ならではの風情をいかしたカフェへと生まれ変わらせました。

▼ニューヨーク体験から生まれたパンケーキ