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【MLB】ボストン・レッドソックス超入門(5ページ目)

ポスティングで松坂大輔の交渉権を得たボストン・レッドソックスはどんなチームか? その歴史からチームカラー、松坂の今後、戦力分析などをまとめた。

執筆者:コモエスタ 坂本

松坂の年俸・契約はどうなる?


12月15日までの交渉期限で、現在もレッドソックスと年俸交渉中の松坂。代理人は強気で名を馳せるスコット・ボラス氏だ。地元紙のボストン・ヘラルドによれば、レッドソックス側が年平均700~800万ドルを提示したのに対し、ボラス氏側は1500万ドル前後を要求した可能性が高いとしている。

結局、どの辺の数字に落ち着くのか。その前に、米ドルで5000万超、日本円にして60億円超の松坂「落札料」の意味について考えてみたい。

51,111,111ドルの意味


松坂に対する入札金額、51,111,111ドル。この数字にはレッドソックス側の色々な意味が込められている。松坂の後に、ヤンキースが約30億円(約2600万米ドル)とほぼ半分の金額で井川投手を落札した。ヤンキースは松坂の「はずれ資金」を井川に充てたと見られるが、ヤンキースやメッツの松坂への入札金額は3000万ドル台だと一部でリークされていた。

つまり、松坂の「相場」は3000万ドル台と見なされていたわけなのだが、それを超えて5000万ドルを投じた理由は、レッドソックスにとって何がなんでも先発ローテーションの柱が欲しかったという「飢餓感」がヤンキースやメッツなど、他の金満球団に勝っていたということだ。

レッドソックスは、入札前後は音無しの構えを見せていた。フタを開けてみるまで、レッドソックスがこんなに高額で落札するとは、おそらく誰もが予想していなかったのだが、この話だけでも「レッドソックスの本気」が十分に窺える。オークションでどうしても欲しい品物がある場合、他を出し抜くための戦術を完璧に遂行したということだ。

また、51,111,111という数字そのものにも勝つ作戦が隠れている。オークションで最後に落札するためには、他よりも1ドル高値であればいい。5000万ドルでも十分に保険がかかっているのだが、念には念を入れて、1を並べた。しかもこの数字は、名投手サイ・ヤングの通算511勝に引っかけてある。非常によく練られた数字であり、ヤンキースが井川のポスティングにつけた26,000,194ドル(194は井川の2006シーズン奪三振数にちなんだ)という数字がまるで児戯に見えるほどだ。

松坂の契約交渉の今後


契約交渉の焦点は、一年あたりの年俸もさながら、何年の契約になるかの方が実は重要だ。ポスティングによる移籍では、6年後にFAが認められるという日米申し合わせがあるのだが、ボラス氏側は3年でのFAを要求して、揺さぶりをかけている。

レッドソックス側とすれば、毎年確実にローテーションを守れて、なおかつまだ26歳の松坂に対して10年契約だって結びたい。おそらく球団側の希望は6年契約で、なおかつ入札金と年俸をあわせた総額が1億ドルといったところだろう。年俸800万ドル(約10億円)×6年で約5000万ドルだ。

入札金を高くすることにより、日本の西武ライオンズ側にも顔を立て、なおかつ年俸を抑える(と言っても10億円レベルだ)ことにより、他選手との均衡やサラリーキャップ回避をはかる。そして総額1億ドルを6年で償還するというのがレッドソックスの本線だろう。

しかしことはそんなにはうまくいかない。レッドソックスは今オフ、主要メンバーの大量移籍(流出)案件が山積みになっており、なおかつFAでもない主砲ラミレスを放出するという動きもある(例年トレード志願で、チームのトラブルメーカーだ)。結局、それらの状況を見越したボラス氏側に詰め寄られ、タイムアウト気味で年俸1000万ドル以上か、出来高を含めればそれを上回る金額、そして契約年数は4~5年というところに妥協せざるを得ないだろう。やはり金満であるレッドソックスは、足元を見すかされるのだ。

※レッドソックスにとって、松坂が1億ドルの経済効果をもたらすかどうかは、ただちに判断できない。グッズや放映権収入はMLBに入ってからの分配だし、観光収入は地域のものだ。球場の売上増は、1億ドルに比較すると比率が低い。結局、「球団の資産価値」という評価額が上がることによって担保されている、バーチャルな額面であるような気がする。

【2007年、松坂とレッドソックスは?】→
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