イングランド遠征第1戦、アイスランドとの戦いは3-2で勝利。小野→大久保で2得点をあげるなど、攻撃面での成果が目立った。レポートは現地から元川悦子さんです。
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圧倒的な存在感を見せた小野、決定率の高さを示した久保、チームバランスを保った中村
ジーコ監督が掲げた「海外組と国内組の融合」は、一応の成功を収めた…。
小野伸二(フェイエノールト)と久保竜彦(横浜)の「新ホットライン」が2ゴールをたたき出し、約2年ぶりに単独でトップ下を務めた中村俊輔(レッジーナ)もコンディションが万全でない中、チームバランスを保とうと献身的に動いて見せた。セットプレーから2失点を食らい、守備面の課題は露呈してしまったものの、日本代表は前向きな結果と自信を得ることができた。
6月9日の2006年ワールドカップアジア1次予選・インド戦(埼玉)を控え、イングランド遠征中のジーコジャパン。30日は12時からマンチェスターの「シティ・オブ・マンチェスター」でアイスランドと対戦。開始早々、相手に先制されたものの、久保の2ゴールで逆転。後半に入って同点に追いつかれたが、三都主アレサンドロ(浦和)のPKで突き放し、3-2で逆転勝利を収めた。
前日とは打って変わり、青空に恵まれたこの日のマンチェスター。キックオフ時の気温は18.6度と低めだった。インド戦を想定すると涼しすぎるかもしれないが、選手には動きやすいコンディションだった。
「欧州組と国内組の連携強化」を最重要テーマに掲げているジーコ監督。GK楢崎正剛(名古屋)、DF宮本恒靖(G大阪=中)、坪井慶介(浦和=右)、中澤佑二(横浜=左)、ボランチ・稲本潤一(フラム)、小野、右サイド・加地亮(FC東京)、左サイド・三都主、トップ下・中村、FW久保、玉田圭司(柏)という予告通りのイレブンを先発起用した。対するアイスランドも3-5-2。チェルシーでクレスポやムトゥを抑えてレギュラーに君臨するFWグジョンセンに注目が集まった。
昼12時から始まったゲーム。こんな時間帯の試合に慣れていない日本選手は集中力が高まりきらず、序盤はイージーミスを連発してしまう。開始5分には、アイスランドのFKからFWヘルガソンにいきなりゴールを奪われ、実に嫌なムードを味わった。だが、この1点で目が覚めたのか、日本は本来のパスサッカーを取り戻す。小野が巧みなボールコントロールを見せ、中村も左右に動いてバランスを保った。稲本は彼ら2人をサポートする仕事に徹した。彼ら欧州組からなる中盤と、久保・玉田のFW陣は息の合ったところを披露。2トップの強烈シュートが時折、相手守備陣を脅かした。
日本の1点目は久保の非凡な得点能力から生まれた。21分、加地~中村とつながったボールを小野が前方へダイレクトパス。これを受けた久保が、3人のDFを華麗なフットワークでかわしてフリーになり、そのまま左足でゴールに突き刺したのだ。小野と久保の連携はピタリとかみ合っていた。彼ら「新ホットライン」は2点目も演出する。前半36分だった。小野はハーフウェーラインあたりから右足アウトにかけて長めのボールをペナルティエリアめがけて蹴った。この瞬間、ウェーブの動きで相手DFを置き去りにした久保がゴール前に飛び出し、GKの裏を突く頭脳的シュートを決めたのだ。
小野と久保は見ていて気持ちがいいほどのキレと技を見せた。攻撃のリーダーとなった小野は、ボールを落ち着かせ、時にはダイレクトパスで決定機を作った。ボールさばきの美しさに、英国メディアも驚きを隠せない様子だった。強烈なカリスマ性でチームを統率する中田英寿(ボローニャ)と違って、根っから明るさの気配りで、小野はチームに「和」ももたらしていた。久保にしても、以前のような内弁慶を脱し、国際舞台で堂々とプレーできるストライカーに脱皮しつつある。その証拠に2月のオマーン戦以降、4試合連続ゴールをゲット。その決定率の高さは、高原直泰(ハンブルガーSV)や柳沢敦(サンプドリア)といった海外クラブ所属FWを大きくしのいでいる。最近の彼は、相手DFやGKの動きをしっかり見たうえで、シュートコースを狙えるようになった。「恐ろしいまでの冷静さ」が備わってきたのだ。
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