中国桂林の奇山群を壮大に描く
安定感があり新鮮味が感じられる水墨画
春の院展出品作の中で、日本美術院春季展賞・奨励賞受賞作品(外務大臣賞受賞作品は除く)および招待、同人作品の中から選考される春の足立美術館賞(足立美術館主催)の第3回受賞者が、院展同人で愛知県立芸術大学教授の松村公嗣(まつむら・こうじ)氏に決定しました。受賞作品「桂林山水(けいりんさんすい)」は、中国桂林の奇山を壮大に描いた、悠久の時の流れが感じられる水墨画で、「この画家は人物、花鳥、風景の何れの分野も描ける画技を持ち、その力量を基に描かれた今回の水墨画は、安定感があり、また、新鮮味が感じられた」と評価されました。受賞作品、作者コメントは下記の通り。
■受賞作品について作者コメント(主催者発表)
数億年をかけて造られたという奇山群は、水墨の代表的な題材である。随分前からこの桂林に行ってみたいと思っており、意を決し昨年5月桂林を訪れることとなった。快晴だった一日目とはうって変わり、二日目は大雨だった。この両極端な天候を体験したことで、作品のイメージが固まった。
二日目、朝から続いている大雨で、辺りは真っ白だった。昼近くになり雨が止むと、霧の間から山々が顔を出し始めた。雲なのか霧なのか、ぼんやりとした太陽の光の中で浮かび上がる世界は、色を失っていた。この世のものとは思えない景色を眼前に、鳥肌が立ったことを思い出す。
この、気の遠くなるような長い時の中で生まれてきた風景に比べると、人間の存在などちっぽけなものである。桂林を通して、悠久の時を見たような気がした。
■松村公嗣略歴
■第62回春の院展受賞者・入選者、巡回予定
■足立美術館ホームページ