「花博・花と緑の日本画展」を開催中の佐藤美術館は、美大系の学生を対象にした奨学生制度があり、開館以来多くの学生の活動を支援してきました。奨学生を、学生の頃から卒業後の活動まで間近で見てきた佐藤美術館主任学芸員の立島惠さんに、最近の若手日本画家事情についてお聞きしました。

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【1】第34回日展の総評と公募展出品状況


第34回日展が各地を巡回していますが、全体的に見て何か新しいものはありましたか。

う~んそうですね。こういう公募展は、数年でドラスティックに変わることはないでしょうけどあえて言うならば、美大系の学生の出品が減少しているようですね。それと若手といわれる範疇の画家の作品に新しい表現や安定感を感じました。

新しい表現や安定感が感じられたというのは、どんな作家ですか。

たとえば、松崎十朗の作品は、プールを描いていましたが今までにない空間表現と銀箔による彼独自の水の質感が融合し新しい表現の領域に踏み込んできた感じがします。また、仙崎誠のモノクロームの風景は、水墨画のイメージでありながら、おそらく墨ではなくて黒の岩絵具を多用した独特な絵肌の風合いが興味をそそられる作品です。

平野美加吉田千恵能島浜江らは、全体的に非常にバランスが良く見ていてとても心地よい作品でしたが、反面今まで感じていた新しい表現へのチャレンジが薄れ、いささか描き慣れてきた感もしました。

新しい表現への挑戦と安定した表現の融合は相反する面を持つのでとても難しいと思いますが、日展だけではなくこれからの美術の社会を背負って立つ画家たちだと思いますのでますます研鑽を積んでもらいたいと思います。

美大系の学生の出品が減っているといえば、ひところ日展では多摩美の学生の出品者が多くて、彼らの作風で会場の雰囲気が変わるほどでしたが、最近はすっかり少なくなりましたね。今回は、少し前の卒業生としては能島浜江、大矢高弓、安田敦夫、清水智和、野田夕希らがいますが、最近の卒業生は見当たりません。武蔵美もその傾向が強くて岡野陽一、時田麻弥、鷲見唯徳ら、東京藝大は日展系の指導教官がいないこともあってもともと出品者が少ないのですが、今回は川田恭子と新川美湖の二人ですね。

院展や創画展にしても同様で、全体的な傾向として美大系の出品者が減少していますね。正確にはわかりませんが、ここ5~6年前くらいからの状況ではないかと思います。今までみたいに先生が日展だから…とか、院展だから…とかで自分の発表の場を選ばなくなってきたのではないでしょうか。同時に美大の先生方も(特に若い先生は)あまりそういうことを奨励しなくなっているようです。

ただ、一部ですが、影響力の強い先生がいらっしゃる大学については逆に若干増えているみたいです。例えば、東京藝術大学では、文化財保存の学生、卒業生から院展出品者が増えているように思います。また、武蔵野美術大学は、創画展出品者が増えていますよね。

日本画は昔から師弟関係が強くて、大学でもそれを踏襲している傾向はありますが、若い人たちを見ているとだんだん変わってきている感じはありますね。

大学側のある種自由な雰囲気もあるでしょうし、発表の場も昔と違っていろいろあるわけじゃないですか。その気になれば選択肢は公募展以外にもたくさんあるのだと思います。

また現にそれを証明している若い作家たちもいますしね。たとえば、岡村桂三郎は公募展(創画展)をやめて無所属で活動しているし、斉藤典彦、武田州左、尾長良範らは、所属団体(創画展)以外にもグループ展、個展なども積極的に行っていてむしろ、その発表のスタンスの方が注目され評価されているのだと思います。

彼らは美大の先生方より若くてむしろ美大生、卒業生の出品者に近い世代。そういう彼らの新しい発表活動は若い画家たちにとって親近感もあるだろうし表現や発表に対する価値観も近いのだと思います。

そんな若い人たちの公募展離れを象徴するように、日本画を対象にしたコンクール展も増えてきましたね。

そうですね。コンクールに出品しようとする方は多くなったように思います。ただ、社会に影響力のあるコンクールとなるとあまりないように思いますが…。

その中で僕が注目しているのが、星野眞吾賞です。この賞は、新しい表現を試み提示しようとする若い日本画家の登竜門的な存在になりつつありますよね。

あとは、今年からスタートした東山魁夷記念賞がありますが、これは推薦制度を採用していますし、画家の実績なども加味されるようなので、若い画家の賞とはちょっと違うと思います。





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