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【この世代に聞きたい】田宮話子 普遍的な設定を描きたい

説明的なストーリーを排除することによって、通りすがりの理解を拒絶するような清らかさが生まれます。普遍的な設定の女性像とは?

執筆者:松原 洋一

田宮さんは女子美術大学では版画科だったんですね。

高校が女子美の付属だったので、大学進学の時は素直に女子美に進みました。版画科はその頃できたばかりで、新鮮な空気を感じましたし、版画の技法も未体験で、興味がありましたから。

三年生になると好きな版種を一つ選ぶんですが、マットなインクが乗る感じが楽しいのでシルクスクリーンを選びました。

また美術史の講義中、光琳の「杜若図」に感動したのもこの頃でした。今まで何度も観ているはずなのに「なんて強い絵なんだろう」と改めて驚いてしまって、それからもう中世、近世の障壁画をみてばかり。

そんなわけで、シルクスクリーンで屏風絵風な制作をするんですが、卒業する頃には、インクじゃ飽き足らなくなって、本物の日本画の材料で屏風を描いてみたいと考えるようになってたんです。


それから芸大日本画科、大学院、デザイン科の助手を経て、後期博士課程と怒濤の研究生活が始まるわけですね。だけどテーマは一環して人物、それもすべて女性ですね。

人物を描く時は、時代や国籍が不明な普遍的な設定で描きたいと思っています。するとどうしても女性の方が描きやすいんです。男性はスケッチとしては面白いのですが、髪形や服装から現実的な背景や職業など見えてきてしまうんで自分には、どうがんばってもニュートラルな状態に見えないんです。

それに加えて、もともと日常的なものを描くのが苦手なんです。絵の中に普段使っているグラスが一つ入ってくるだけでも、もうダメです。自分の絵の中に必要のない日常的な設定や物語が生まれてしまうのが嫌なのかもしれません。

日々の生活の中に、美を見い出す事は大切な事だけれども、それをそのまま自分の絵のモチーフにするのは、自分の性格からいってどうも無理みたいです。ただもう、恥ずかしいだけで…。


日常的なものを絵の中に入れるのが苦手だというのは、田宮さんの本質的な純粋さを表していますね。通りすがりの理解を拒絶するような清らかさが感じられます。だから田宮さんの発表は何年も続けて見ることが必要なのだと思います。そのうちに見る側の奥の方に何かが蓄積され、ある時突然それが飽和状態に達して田宮さんのことが理解できるようになるのだと思います。

ところで田宮さんの今後の抱負は?


昨年の4月から、ほぼフリーな生活を始めたので、とにかく一カ月でも長く絵描き生活を継続させたいです。精神的にも生活や仕事の状態でも、今までになく恵まれた状況なので、今こそ描かなくちゃ、と思います。ただ学生時代から常に、良い絵を描く友人が身近にいたのもあって痛感しているんですけど、自分の絵の基礎体力(デッサン力、技術)のなさからも、逃げないで描こうと思います。

デッサン力というのは、体にたとえれば足のようなものだと思います。どんなに強い足を持っていても、行きたい場所が決まっていなければなんにもならない。逆にどんなに目標が定まっていても基礎体力がなければうまく進めない。だからと言って早さや美しさを競うためのものでもない。あくまでも自分が行きたい所へ自分を運ぶための体力をもっとつけたいです。

というわけで、当面は生活力と基礎体力のパワーアップが課題ですけれど、また秋にむけて制作がんばりますので、どうぞよろしくお願い致します。




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