日本画/日本画関連情報

日本画家の境界線

「日本画」という言葉から連想されるものは、花や鳥、風景などの美しい造形でしょうか、それともキラキラと輝く岩絵具や金箔に彩られた様式美でしょうか。現代日本画はそのような伝統的な美意識を持ちながらも、多様化する表現の中でコンテンポラリアートとしての一面も持つようになってきました。いったいどこまでが日本画なのでしょうか。

執筆者:松原 洋一

ジャンル分けというのはやっかいなもので、どんなに気を使って分けても、どれにもあてはまらないものが必ず出てきます。と言うより作家はどれにもあてはまらない表現を求めているのかも知れません。そもそもジャンル分け自体がナンセンスなのかもしれませんが、「日本画」とか「洋画」という言葉だけでおおよその作風が連想され、沸き立つイメージがあるのなら、その表現もまた大切にしたいものです。

コンクールや美術賞などをみても、日本画と洋画の間ではずいぶん前からボーダレスな傾向をみせています。日本画の画材を用いることを基本的な条件としていた山種美術館大賞展では、洋画家の神谷かんや菊地武彦も出品していましたし、洋画壇の登竜門として長く続いた安井賞展には日本画家の武田州左、尾長良範、岸野香らも出品していました。

また洋画商の日動画廊が主催する昭和会展の今年度の大賞は日本画科出身の小野月世でした。

日本画には岩絵具に膠を使用するというけっこう限定された概念がありますから、それ以外の油彩や水彩、アクリルなど広い範囲の平面表現が洋画ということになりまが、最もジャンル分けでやっかいなのは立体作品も含め、どの分野にもコンテンポラリーな表現が存在するということです。

現代日本画においても表現が多様化しており、作品からは日本画を連想できないものが多くあります。しかし日本画家が制作した立体作品やインスタレーションをみると、むしろ日本画家としての精神性が強く表れ、かえって日本画的だと思うことがあります(少し強引です)。

だからジャンルそのものにこだわる必要はないのですが、このサイトが日本画をテーマにしており、現代日本画家としてリンク集を作成しているので、サイト内での日本画家の境界線を明記しておくことにします。

そこで下記に1~6までの作家を挙げました。さて境界線はどこでしょう。

1 及川聡子(日本画科のない造形大出身、創画展に出品)
2 長沢明(日本画科出身、平面に加えコンセプチュアルな作品を制作)
3 内倉ひとみ(日本画科出身、作品は立体)
4 中村ケンゴ(日本画科出身、ネット上のインタビュー記事などでも活動)
5 村上隆(日本画科の出身で、バカボンを美術の世界に迎え入れる)
6 菊地武彦(洋画団体である行動美術協会の会員で、作品は岩絵具に膠を使用して制作。日本画的な非具象の作風で、日本画家との企画展も多く、日本画に限定して選出される山種美術展賞にも出品)

表現方法ではどんなに日本画とかけ離れていても日本画家としているこのサイトですが、4と5の間に境界線を設定しています。

5の村上隆は東京芸大の日本画科の後期博士過程を修了していて、論文を提出せずに満期退学する人が多いなか、珍しいほどの日本画のキャリアですが、最近では各メディアなどに登場することも多く、その作品の傾向から日本画家というイメージはないのではないかと思い、ここに境界線を置きました。

掲載作品は長沢明展(GALLERY HIRAWATA 2001年3月10月~4月8日)から
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