月額1500万円ともいわれていますね
報道の通りとするならば、本来、申告を行なっていない時点で「修正申告に応ずる」という会見自体がオカシイのですが、そもそも、税務上、「贈与の事実」の認定はどのような基準で行なわれるのでしょうか。
今回の事案は贈与を受けた側が片や一国の首相、片や元総務大臣でもあり、かつ、その金額も多額にのぼることから注目を浴びたのですが、整理してみましょう。
民法上の贈与
民法上の贈与の規定は、贈与者側の「あげる」という意思表示と、受贈者(贈与を受ける側)の意思表示によって成立する契約ということになり、書面で取り交わしても口約束でもかまわないということになっています。このことに照らすと鳩山由紀夫・邦夫両氏とも「まったく知らなかった」とか「寝耳に水」などとの報道がなされ、その認識が事実だとするならば、受贈者の意思表示があったとはいえず、贈与にはならないのではないかとの解釈も成り立ちます。
税務上の「みなし贈与」とは
しかし、「贈与と認定を受けないよう受贈者側が意思表示をしなければかまわない」というのであれば、実質的な贈与事例はいくらでも可能になってしまうでしょう。そこで、税務では法律的には贈与契約によらなくても、その内容が実質的に贈与をしたのと同様な効果を生じる場合には、税負担の公平を期すために贈与とみなす規定が相続税法9条に設けています。
さらに相続税法基本通達9-10において無利子の金銭貸与等についてみなし贈与にあたるケースとして「夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で・・(中略)・・無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする」として、例示をしています。
お目こぼしとなる贈与もある
では、一般に贈与を行なった場合の税務手続きはどうすればいいのでしょうか。まず、この手続きは受贈者側が行なうことになり、計算期間は一暦年、つまり、1月1日から12月31日までに110万円(贈与税に基礎控除のワク)を超える贈与があった場合に、その翌年の2月1日から3月15日までの間に税務申告と贈与税の納付を行なわなくてはなりません。逆からいえば、年間、110万円以下の贈与であれば、贈与税の申告の義務も納付の義務もありません。また、「贈与である」ということを公的に証する書類として、贈与税の申告書を提出して、合法的に財産移転を行なっている資産家の方が多く見受けられるのも事実です。
贈与税の対象とならない贈与もある
ただ、財産の無償移転を何でも贈与としてしまうと、国民感情の面からも適当ではないケースもでてきます。たとえば、親子間でいえば扶養義務者間における生活費や教育費などの財産の無償移転です。これは、贈与税の非課税財産といわれるもので、ほかにも、結婚式の祝い金・香典・年末年始の贈答などが挙げられます。ただし、生活費や教育費などの名目で、預貯金に回せるほどの金額であった場合はやはり、贈与税の対象となります。
今回の鳩山家の事案は相続税法9条に照らしても、この非課税財産の規定に照らしても、やはり、税務上の贈与にあたるのではないでしょうか。
日本国憲法30条には「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」とあります。一国の首相や元大臣歴任者であるからこそ、きちんとした税務手続きが望まれます。