深澤直人×LAMYが提案するデイリーユース
LAMY「noto」各色1,470円(税込) |
LAMYの新作「noto」は、深澤直人氏によるデザインである事や、限定版が先行発売される事など、発売前から注目されたボールペンです。ところが、実際に登場した「noto」は、そんな前評判の賑やかさとは対照的な、静かな雰囲気を持ったデイリーユースのボールペンでした。四色揃ったカラーバリエーションを見ても、事務や勉強、メモなどの用途を想定した、現場向きのペンだと思います。
LAMY「noto」にはサイン入りの限定版(下)と価格違いの高級バージョン(上)もある。 限定版は1,575円(税込)、高級バージョンのブラック×シルバーは1,890円(税込) |
その軽さや、1460円という低価格、これ以上ないほどシンプルな形、ラミーであることを主張し過ぎないさりげなさなど、日常的に使うものとして作られたペンである事がうかがえます。このような、使うためのデザインとモノとしての魅力が、きちんと融合して、尚且つ安価である、というのは、ありそうで無いもので、ガイド納富が知る限り、ボールペンでは、ペリカンのNo.1以来ではないかと思います。
クリップのデザインに見る巧妙な仕掛け
本体をくりぬいたようなデザインのクリップ |
notoの外見上の特徴の一つは、軸を刳り貫いたように見えるクリップの形状でしょう。深澤氏のデザインらしい、ミニマムな構造ですが、よく見ると、軸本体よりもクリップの方がホンの少しだけ上にあります。そのおかげで、クリップに何かを差込む時、スムーズに挿せるのです。
このような、単にシンプルさを心掛けただけのデザインではない、シンプルに見せるための手間ひまが掛けられた仕掛けに、デザインと使い勝手の融合が感じられます。さらに、芯を出すためのノックのメカニズムを、このクリップの下に配置する事で、見た目のシンプルさを損なわないように考えられています。
必要と遊び心を両立したノックボタン
三角の軸に平たいノックボタンが印象的 |
notoのもう一つの大きな特徴は、平たい形状で中心からズレた位置にあるノックボタンです。中心からズレた位置にノックボタンを配置するのは、同社の名作ボールペン「Swift」でも採用されているデザインですが、notoの場合、軸が三角であることと、クリップのパーツが差し込み型であることから、ある意味、必然的に導かれた形状と位置だというのが面白い所です。
三角の軸に丸いノックボタンでは、ノックボタンを小さくしないとデザイン的にキレイにはならず、しかし、それでは押しにくくなってしまいます。しかも、クリップのアイディアを活かすには、ノックボタンを中心に配置する事が出来ません。そう考えていくと、この形状が当たり前のように導かれるのですが、それが実際に製品になっているのを見ると、やはり感動的です。要請された形が、まるで遊び心を表したような結果になっているわけです(もっとも、最初から全てが計算されていたのかもしれませんが)。
三角の軸とM16リフィルによる書き心地の良さ
ペン先がブレないので書きやすい |
角が丸い三角の軸というのも、持ち易く、転がらず、手に取りやすいため、実用上とても良い形だと思います。特に、転がらないというのは狭いスペースで作業をしている際には、とても有り難い仕様です。グリップ部の三角の角の丸みが指先にフィットするのも、三角が単に三角なのではなく、指と軸の馴染み方を計算した三角だからでしょう。
リフィルはLAMY「M16」(840円)を使用 |
リフィルはラミーの「サファリ」や「ラミー2000」などの、ラミーの主要製品で使われている「M16」。840円とやや高いリフィルですが、容量も大きく、油性ながら軽い書き味の名品です。軸に工夫があって、筆記時にペン先がブレないのも、このリフィルの魅力。notoが、この価格帯なのに、ペン先がブレずに書き易いのは、このリフィルのおかげでもあるようです。リフィル交換の際の、軸を回して取り外す際のアクションの精巧さも、notoの魅力の一つです。