1887年創業の「紙」にこだわる老舗文具店「スマイソン」
スマイソンの紙には1枚1枚透かしが入っている
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イギリスはロンドンのニュー・ボンド・ストリートに店舗を構える「スマイソン」は、日本語で言えば文具店なのですが、扱っているのは紙製品と革製品が中心です。紳士淑女のための書斎の常備品を扱う店と捉えると間違いないかもしれません。特に紙製品については、1887年の創業以来、代々の英国王室ご用達(いわゆるロイヤルワラントですね)を務める名店です。
店舗には、エリザベス二世、エディンバラ公、チャールズ皇太子、エリザベス皇太后の紋章が掲げられているのですが、この四人だけが、現在英国王室で、ご用達の認定を行える方々ですので、言ってみればご用達の中のご用達、といったところでしょうか。実際、レターセットに使われている紙は、古い英国紙幣に使われていたもので、その手触りの良さと、万年筆のインクを程よく染み込ませる書き心地は、ちょっとびっくりします。
そのスマイソンの創業者である、フランク・スマイソン氏が1892年に発明した紙が、Featherweight Paperと呼ばれる、文字通り羽根のように軽い紙でした。薄いので綴じてもかさ張ることが無く、軽いので持ち運びにも便利。そして破れにくく、裏写りしにくい、そんな、正に手帳を作るために生まれたような紙です(この製法は特許になっているそうです)。スマイソンの手帳やノートは、全てこの紙が使われています。その紙の独特の薄い青は、ボンド・ブルーと呼ばれ、スマイソンのイメージカラーにもなっています。写真ではきちんと再現するのが難しいのですが、淡過ぎず濃過ぎず、とてもキレイな青なのです。
そのさりげない佇まいにスマイソンの矜恃を見る
スマイソン「手帳 6穴バイブルサイズ」 |
スマイソンの製品全体に言えることですが、とにかく奇を衒ったデザインが一ヶ所も見当たりません。この6穴バイブルサイズのシステム手帳にしても、端正過ぎると言っても良いほどです。でも、この型押しのカーフの表紙の、手に吸い付くような肌触りと、暖かな感触の心地よさは、それだけで只者では無い感じが伝わります。でも、何と言うか威嚇しないのですね。「俺は高級品を使ってるぜ」というような嫌みな感じは一切無いのです。
最近では珍しい、ハードカバーなのも、いかにも英国紳士風の趣を感じさせてくれます。カッチリとまとまっていて、でも決して硬直しているわけではない感じと言うと分かりやすいでしょうか。色は他にベージュも用意されています。ピッグスキンの質では世界一とも言われるスマイソンですから、ベージュのカバーの出来も凄く、どちらも一生使っていけるバインダーと言えるでしょう。
必要最小限のポケットとペン挿し。
シンプルにまとめた美しい内部 |
リフィルやペンも付属しています。リフィルは当然、Featherweight Paperを使ったオリジナル。見開き1週間のダイアリーや住所録などが用意されています。規格は通常の6穴バイブルサイズなので、市販のリフィルも使えますが、やはり、この手帳を使うのなら、スマイソン・オリジナルのリフィルが使いたいところです。付属のペンは小振りのキャップ式の油性ボールペンです。鉛筆のような形状が手に馴染む、このペンだけでも欲しいくらいのペンです。
ペン差しはもう一ヶ所用意され、名刺やカードを入れるスペースやポケットなど、必要な機能はもれなく装備。カバーが固く、しっかり180度開く上に、厚手のプラスチックの仕切りがたくさん付いていて、どのページもとても書きやすいのも、この手帳の特徴。ポケット類が最小限に留められているのも、この書きやすさを実現するためなのでしょう。膝の上や狭いデスクでも、快適なライティングテーブルにしてしまうような、そんなカバーなのです。
アドレス帳やダイアリーなどのリフィルが付属する
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リフィルは全て、一枚一枚にスマイソンの透かしが入っています。この透かしが、本物のFeatherweight Paperを使っているという証でもあります。紙の書き心地や使い心地は、次のページでしっかりレポートしますが、この薄さと軽さは、様々なリフィルを綴じるシステム手帳の形式に最適です。できれば、全てのリフィルをこの紙にして欲しいほどです。例えば1年分のダイアリーのリフィルが、通常のリフィルの三分の二くらいの厚みしかないのです。
細部を見たり、使ってみたりすればするほど、じわじわと沁みるように、持っていることへの満足感が高まるのが分かります。機能にしても、デザインにしても、使い心地書き心地にしても、さりげなく自分をサポートしてくれる、そんな理想が何気なく形になっている、ガイド納富は、そんな手帳なのだと思いました。
次のページは、スマイソンのポケットノートのシリーズを紹介します