突き抜けた凄みを感じる万年筆「Forbidden City(紫禁城)」
ビスコンティ「紫禁城(シルバー)」 |
もう、どこから見ても実用品とは思えない、とんでもなく仰々しい、でも実際に手に取ると、もうそんなことは全部飛んで、思わず惚れ惚れと眺めてしまう、それが受注生産の「Forbidden City(紫禁城)」でした。7年かけて紫禁城を調査し、中国皇帝の住まう所としての紫禁城そのものを一本のペンに封じ込めようとした、その意気に感じてしまいました。
金属の軸の周りに、紫禁城と世俗を隔てる檻としてのレジン素材による格子があり、そこから霊獣がのぞきます。霊獣の位置も龍、鳳凰、獅子を神格に則って配置。さらに篭目などの魔除けの意匠などをちりばめて、そこまでしなくても、と思うほどの徹底した仕事ぶりなのです。見れば見るほど、ここまでやるなら、もう文句はない、と思ってしまうのです。しかも、ビスコンティ独自のインク吸入機構である「パワーフィラーシステム」を搭載。この1本に、カートリッジインク6本分のインクが入るのです。その唐突な実用性に、また惚れてしまいます。
「マッツィー・コレクション」の芸術であることの分かりやすさ
ビスコンティ |
イタリアの人気エアブラシ・アーティストであるクラウディオ・マッツィーが、1本1本エアブラシで軸に直接絵を描いたシリーズが、「マッツィー・コレクション」。これはもう、工芸品というか、そのペンそのものが作品です。だから、ペンを買いつつ、絵も買うことになるわけです。それは、日本の蒔絵万年筆(ビスコンティにもありますが)の発想を、さらに推し進めたもの。もはや、図案ではなく、具体的な絵画が、そのままペンの形をとるわけで、芸術作品としての万年筆を、ここまで体現したものは少ないでしょう。
ただ、これは、そこに描かれている絵が好きでないと買えない筆記具でもあります。手にしてみると、とても持ちやすいバランス型の万年筆で、筆記具としても優れていることが分かります。そして、絵は図案こそ同じものがあっても、それぞれが1点ものです。そんな手間暇がかけられて、しかし、とても趣味性が高く、絵柄や技法、作家が好きでないと買えないという、そのアンビバレンツな思いきりの良さにも、ビスコンティという会社のアートに賭ける意気込みを感じました。
ガイド納富の「こだわりチェック」
ビスコンティ「ヴァン・ゴッホ・タートル」 |
受注生産で世界限定888本、定価399,000円の「紫禁城」が買いたいかと言うと、欲しいけど買わないと思います。しかし、こういう万年筆を作ろうという情熱は、何て凄いのだろうと思うのです。その情熱は、低価格の製品にも活かされています。天然レジンと植物成分を混ぜることで得られる不思議な色彩を持ったペンに「ヴァン・ゴッホ」と名付け、自然が生み出す色使いを楽しむというのも、何とも贅沢で、でもとても面白い工夫だと思います(低価格といっても、万年筆だと1本約20,000円ほどしますが)。
身近なところでは、「ヴァン・ゴッホ」シリーズのミニボールペン(15,750円)が面白いと思いました。ヴァン・ゴッホの標準サイズよりかなり小さいサイズで、ちょうどロディアのメモカバーなどに合う長さですが、その風合いや質感はヴァン・ゴッホ・シリーズのもの。価格も手頃です。上の写真のような、とても綺麗な色が出るヴァン・ゴッホ・シリーズですから、持っていて嬉しく、飽きません。
そういえば、ダンテ・デル・ベッキオ氏によると、黄金比をモチーフにした万年筆「ディヴァイン・プロポーション」には、映画「ダ・ヴィンチ・コード」同様、謎が隠されているのだそうです。カンヌ映画祭では、ダ・ヴィンチ・コードの出演者・スタッフと同席するダンテ・デル・ベッキオ氏は、出演者に謎を解いてもらうことを目論んでいるようなのです。浮世離れした話ですが、そのくらいでないと、こんなペンは作れないのだろうな、と思いました。
<関連リンク>
・日本シイベルヘグナーによるビスコンティの公式サイト(日本語)
・ビスコンティの公式サイト(英語)
・「ヴァン・ゴッホ」シリーズの紹介ページ
・「紫禁城」の紹介ページ
・セルロイドの説明
・ビスコンティの日本代理店、日本シイベルヘグナーのサイト
・ビスコンティのトラベル・インク・ポット
・ペンハウスのビスコンティ購入ページ
・黄金分割デバイダー「コンパッソ・レオナルド」購入・紹介はこちらから
・映画「ダ・ヴィンチ・コード」の公式サイト