12枚のポスターを1冊にまとめたポスターブック
ボイジャー「大過狗年」価格2,520円(税込)
|
中国にはポスター文化とでも言うべきものがあるようです。ガイド納富も何枚か持っているのですが、中国の骨董屋さんには、普通に文化大革命の頃のポスターなどが売られています。それがまた、絶妙な図案と、版画風のタッチが面白い味わいを出していて、インテリアとして十分使えるものだったりします。
また、おめでたい図案の種類と数と深さでも、中国に勝る場所はないでしょう。元々、日本の浮世絵などの「刷り物文化」も中国から来たもののようです。もっとも、そういう歴史的なことは抜きにしても、ポスターや図案というのは、見ていても楽しく、飾っても良いものです。そういう意味でも、ポスターを集めて一冊の本にした、「ポスターブック」というのは、プレゼントされたりするととても嬉しいものです。
日本では、あまり見なくなったポスターブックですが(かつては、全ページがポスターになるB2版の雑誌なんてのも出ていました)、中国の伝統工芸や民俗を記録し出版している台湾の出版社「漢聲(ハンシェン)雑誌社」から出た「大過狗年」が、日本で手に入るようになりました。これがまた凄い出来で、12枚のポスターに合計300の犬にまつわる吉祥図(つまりは、縁起が良い図案という意味ですね)が描かれています。
美しい切り絵から細密画まであらゆる吉祥図を網羅
ポスターが八つ折りで12枚入っている |
この「大過狗年」は、横24.5cm、縦29.7cmの、LPレコードより少し小さな本ですが、中には八つ折りになったポスターが12枚収録されています。ポスターは、広げると横57.5cm、縦97cmという大きさ。部屋などに飾るのにもちょうど良いサイズだと思います(ごく少数ですが、折り目なし筒入りのバージョンもあるようですが、この記事がアップされる頃には売り切れていると思われます)。
元々、中国の民間文化、民間生活、民間信仰、民間芸術に強い出版社が編集したものだけに、それぞれのポスターには、至る所に縁起の良い意匠が施されています(発売元のボイジャーのサイトに、それらの詳細を解説したページが用意されています)。それでいて、全体に一つのポスターとしてデザインされているのが、このポスター集の凄い所だと思うのです。普通に、シャレたポスターとして部屋に飾っていて、それがとても縁起が良いというのは、ちょっとドクター・コパみたいな感じかもしれません。
図案でありアートであり縁起物でもある
|
印象的な切り絵による図案については、巻末に切り絵の作り方まで掲載されていて、あくまでも実用的です。美術書でありデザイン集でもあり、しかも実用書であるというのがまた、中国風ですね。カレンダーではなく、あくまでもポスター集であるというのも、そのデザインへの自信がうかがわれます。
ガイド納富の「こだわりチェック」
切り絵をあしらったオリジナル梱包で届く
|
実際、中国の切り絵や吉祥図のデザイン性の高さは、類を見ないものだと思うのです。しかも、西洋のアンティークのような時代性を濃く残したデザインではなく、いつの時代に見ても、どこか懐かしいようで、どこか新しく、古くささを感じさせないのが中華デザインの不思議なところです。そして、何より細工は細かく、デザインは大胆という二律背反なビジュアルがカッコ良いのです。
ボイジャーのホームページから通販でのみの販売ですが、切り絵を大きく印刷したオリジナルの梱包で届くので、そのままプレゼントにすることが出来ます。また、日本の出版物から考えると、このクオリティでこの価格(税込み2,520円)は驚きです。印刷も美しく、紙もポスターとして使っても十分長持ちしそうなものですから、なおさらです。
そして、ここまで派手な色使いで、でも下品にはならないというのは、中々ありません。迫力は十分で、やたら目立つけど、貼っていて邪魔にならない感じなのです。もちろん、図案集として持っていても楽しい本です。そんな風に様々に楽しめるのも、ポスターブックならではの魅力でしょう。
<関連リンク>
・「大過狗年」の詳細と購入はこちらから
・「大過狗年」収録のポスター個々の解説はこちら
・「大過狗年」を輸入販売しているボイジャーのサイト