ロシアカメラの面白さにどう付き合うか
BelOMO 「AGAT 18K」 価格8,800円前後
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カメラと一口に言っても、一眼レフ、二眼レフ、レンジファインダーにコンパクトなどなど、その種類は色々。しかも、それぞれにデジタルとアナログがあって、それぞれにまた、様々な種類があります。それらのカメラを用途や撮りたい写真によって使い分けられれば、カメラとの付き合いも深くなり、写真を撮ることがさらに楽しくなります。
中でも、それなりに凝り甲斐があって、初心者から上級者までその腕に合った写真が気軽に楽しめるのが、トイカメラやロシアカメラといわれるジャンルです。一世を風靡した「LOMO LC-A」や「HOLGA 120」といったカメラはトイカメラの代表として、多くのファンに支持されています。ガイド納富も「HOLGA」にポラロイドカメラの機能を追加した「POLA HOLGA」での撮影を楽しんでいます。その構造のチープさ、レンズの独特の歪みから生まれる不思議な味わいの写真は、使いようによっては面白いものです。
しかし、大人の男が常に持ち歩くには、HOLGAは大き過ぎるし、LOMO LC-Aは小さく、デザインも良いのですが、いわゆる「ロモグラフィー」と呼ばれるようにクセの強い写真になるせいで、撮り続けると単調な写真ばかりになりがちです。そこでオススメなのが、LOMO同様、旧ソ連領、ベラルーシ国のミンスクで作られていたBELOMO社の「AGAT 18K」です。サイズは煙草の箱程度で、総プラスティックのボディの造りはあくまでもチープ。本当に、笑ってしまうほど安っぽい質感のカメラです。でも、このカメラが侮れないのです。
AGAT 18Kでカメラの原点に帰ろう
黄色いリングで露出、レンズを回してピント
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「AGAT 18K」は、距離計も露出計も内蔵していないから電池も不要。自分で距離を合わせて、露出を決めてシャッターを押すという、いわゆるフルマニュアル機です。そう聞くと難しいカメラのようですが、そんな事はありません。距離は目測ですが、レンズ周りに0.9m~無限遠までの目盛りがあるので、そこで大体の感じで合わせます。露出は、お天気マーク付きのリングを、その時の明るさに合わせて動かせばOK。あとは、レンズの右下にある黄色いシャッターを押すだけ。ハーフサイズですし、お天気マークを薄曇りくらいに合わせて、距離は3~5mの間くらいに合わせておけば、後は被写体に向けてシャッターを切るだけで、それなりの写真が撮れてしまいます。
そして、その出来上がりが結構凄いのです。その当時の最高品質のレンズが採用されているだけあって、その解像感、描写力はツァイスのレンズに匹敵するほどです(元々、AGAT 18Kに採用されたレンズはツァイスのコピー品として作られていたという話もあります)。その極端に高い描写力のせいで、細部はきっちりと映し出しながら、全体としては、どことなくリアルさを欠いた作り物めいた印象になるのが、AGAT 18Kの面白さ。その微妙ながらも独特な雰囲気は、被写体によって、撮影する人によって、様々な違いを見せてくれるので、つい、色んな人に渡して、撮ってもらいたくなるカメラでもあります。
AGAT 18Kによる作例 撮影:清水恵美
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現像に出して上がってくるまで、どんな写真が撮れているか分からないのが、AGAT 18Kの怖さです。でも、自分の思った通りには中々撮れないけれど、その内の何枚かは、想像を超えた面白い写真になるのです。何だか、カメラを初めて持った子供時代に戻ったかのような気分です。お天気マークによる露出も、バカみたいですが、これでちゃんと写るのです。
撮る喜び、見る喜びに加えて「持つ喜び」も
上部の蓋を外すとストロボ用のX接点がある
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そして、このプラスチックカメラは、軽いのです。また、レンズキャップ兼用のストラップが付いていて、首にかけておくことも出来ます。ハーフサイズのカメラですから普通の35mmフィルムが使ええますし、例えば36枚撮りのフィルムを入れると、72枚以上撮影が出来てしまいます。だから、常に身に着けておいて、心に留まるもの全てに向かってシャッターを切る、といった使い方が出来ます。まるでデジカメ並の気楽さです。
デザインも、黒と黄色を上手く組み合わせたポップでキレイなものです。上部の蓋の下にはストロボを装着するX接点も隠れています。フォルム巻き上げのためのダイヤルは大きく、フィルムを入れるためにはボディを二つに割るようにしなければならない、その不思議な構造も、実際に持ってみると凄く魅力的に思えてきます。そんな「持つ喜び」のあるカメラなのです。
カメラとしての基本データは以下の通り
レンズ:INDUSTAR-104 28mm/F2.8
サイズ:94×59×42mm
シャッター速度:天気マーク表示(1/65~1/540秒)
絞り:f2.8~f16
撮影可能距離:0.9m~無限遠
重量:約110g
三脚穴もついてるし、シャッターにはレリーズ用の穴も開いています。カメラとしての機能はきちんと一通り揃っているのです。そして、適性露出(やや明るめが良いようです)で、ピントを合わせて手ぶれさせずに撮れば、時々ビックリするような写真が撮れたりします。
ガイド納富の「こだわりチェック」
フィルムの装填はボディを二つに割って行う
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このカメラ、使い始めると手放せなくなる、楽しくも面白く、しかも便利で高性能(?)なカメラなのですが、既に製造中止になっていて、デッドストックなどの流通分のみ、というのが問題ではあります。それでも、ロシアカメラなどをメインに扱っているショップやサイトでは、時々入荷するようですから、マメにチェックしましょう。また、ヤフーオークションやe-bayといったオークションには、常に数台出ているようです。
いずれにせよ、価格は1万円を越えることは無いようですので(というか、どう考えても数万円出して購入するようなカメラではありません)、無理して購入することなく、運と縁を頼りに入手してください。ショップでも、大体8000円から9000円というのが相場のようです。
ロシアカメラの系列では、他にLOMO社の「SMENA 8」などの名機もあり、それぞれ個性があって楽しめます。ガイド納富も、いくつかのカメラを使ってきましたが、中でも使用頻度が高く、使った時の満足度が一番高いのが、この「AGAT 18K」。それだけの魅力はあるカメラですので、是非、適正価格で売られているのを見かけたらすぐ購入する価値はあると思います。
今回ご紹介のAGAT 18Kを探すなら、以下のショップからどうぞ。
▼LOMOやHOLGAの購入なら「LOMOGRAPHY JAPAN」
<関連リンク>
・鈴木商店のAGAT
18Kの解説ページ
・ケータイWatch本日の一品の「AGAT
18K」紹介記事
・fantastic
camera galleryの解説と作例
・Belarusian Optical and Mechanical
Association (BelOMA)