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AMGのエンジンには、エンジニアの名前の入ったプレートが与えられる。それが一体どういうことなのか、今回AMGを訪問してようやく知ることができた。
実はAMGでは1機のエンジンを、最初から最後まで1人のエンジニアが手作業で作り上げていたのだ。つまり、エンジニアはワーキングステーション(台車)を用意し、そこにブロックを載せ、自分の手でコンロッドやピストンやクランクなどをひとつずつ組み付けていく。そして完成した時に、自分の名前の入ったプレートを貼り付けるのである。
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そしてこの日、そんな5.5Lエンジンを搭載した最新のAMGであるC55AMGに試乗することができた。5.5Lとはいっても、Cクラスに搭載されるそれはNAであるのが特徴。E55AMGのようにスーパーチャージャーは組み合わせられない。やはりこのクラスともなると、さすがにスーパーチャージャー付き5.5LV8の生み出すパワー&トルクは受け止めきれないのだろう。事実CLK55AMGも、同様にNAエンジンを搭載する。唯一の例外は最近特別な限定車として発表されたCLK―DTM-AMGが5.5Lのスーパーチャージャー付きV8を搭載するが、これは本当に特別なモデルだからこそ。実際このモデルはHWA(AMGから分かれ現在ではDTMマシンを扱っている)が生産を行うほどだ。
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そんな第一印象は、スロットルのひと踏みで「AMGとして」のものに変わった。当然ながらCクラスに5.5LのV8という組み合わせは強烈の一言である。C32AMGでは例えスロットル全開でもジェントルな雰囲気を忘れないところがあったが、C55AMGではかつてのAMGにあった良い意味での乱暴な感覚がある。背中をシートにめり込ませ、どこまでも加速していく様は改めて圧巻。
高速道路を矢のように突き進む…といいたいところだが、さすがにC32AMGのようなバランスの良さとは違う。比べるとやはりフロントは重めであることを感じさせ、サスペンションも動力性能アップに合わせハードになっているから、超高速域ではややクルマが跳ねる傾向が見受けられた。これはCLK55AMGと大体同じなのだが、細かく言うとCLK55AMGよりは明らかにロードホールディング性能は増している。