そして、もうひとつ噂がある。そう、忘れちゃならないトヨタのスポーツカーである。これはもしかすると、次期NSXよりもさらに早く姿を拝めることになるかもしれないのだ。理由としてトヨタは既に、93年のスープラ以降本格的なスポーツカーを送り出していないという事実があるからである。
既に10年もの間、トヨタにはスポーツカーが不在なのだ。この件に関しては当然社内でも議論されているはずだし、実際にトヨタの方に話を伺うと、例えば役員や技術者などは「すぐにでも出せるだけの準備はある」というような趣旨の発言をするのだ。では何が邪魔をしているのかというと、私が聞いたところによれば、もちろん役員判断なども含まれるらしいが、それに加えて今トヨタではデザイン面について慎重になっている部分もあるのだという。
F1にも参戦し、世界の3本の指に入るメーカーに、イメージリーダーとなるようなスポーツカーが存在しないのはやはり不自然である。しかし逆をいえば、そういうトヨタだからこそスポーツカーには相当に慎重になっているのだろう。トヨタはかつて、2000GTというスポーツカーを送り出した経緯を持っている。次にスポーツカーを出すとするならば…当然、それよりもインパクトのあるものを送り出したいと考えているはずだ。
すると余計にデザイン面では慎重になるだろう。なぜなら2000GTは今見ても美しいし、名車といわれるだけの存在感を強く感じさせるデザインを持っているからだ。これを超える…となると、さすがのトヨタもやはり腰が引ける部分があるのではないだろうか。
ともあれ、判断が下されれば登場するのは最も早くなるのではないだろうか? 先に述べたように「準備は整っている」らしいのだ。それはつまり技術的な目処は付いている、と解釈して間違いないだろう。
こういう視点から見ると、「じゃ04年は?」という話になるわけだが、スポーツカーの前哨戦として見れば興味深いのではないだろうか? トヨタは年末にクラウンを一新させ、来年は日産がセドリック/グロリア、そしてホンダがレジェンドを送り出すというアナウンスがなされている。サルーンとスポーツカーは全く違うものだが、最近のプラットフォーム戦略からみれば、それらのサルーンに含まれる何かが、各社の次期スポーツカーにも関係してくるだろうし、それらのサルーンに込められた思想の中にも何かヒントは隠されているはずである。そう考えると、来年登場する各社のサルーンもまた、見過ごすことはできない状況なのだ。
果たして日本においては、現在のところの情報をまとめてみると、05年辺りから補鳴く的なスポーツカーの胎動が始まり、07年のGT-R辺りでピークを迎えるのではないだろうか? かつて89―90年辺りに、日本のスポーツカーは世界に誇れるものとして登場した。その再来が時を経てやってくるのではないかと僕は期待している。そしてそれらのスポーツカーの中から、自分自身が1台を選んで実際に所有してみたいとも思っている。その意味でも04年は期待に胸を膨らませて未来のスポーツカーを想像できる年になるような気がするのだ。
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