406ps/553Nm…4.2リッターの排気量を持つV型8気筒のスーパーチャージャー付きユニットが発生するその力は、Sタイプに2つの顔を持たせる要素となっている。
1つは高級スポーツセダンとしての豊かさやゆとり、そしてもう1つが獰猛さをむき出しにした豹のようなワイルドさだ。
4.2リッターのスーパーチャージドV8は、わずかなアクセル開度で十分な力を発生する。だから街中などでは、本当にアクセルペダルに触れているだけで流れをリードできるほどだし、合流などでも少し力を込めるだけでグイグイと前へ押し出される感じがある。さらに高速巡航でも、力強さは相当のゆとりを生む。406ps/553Nmという巨大な力の存在を背景に感じながら、その上澄みだけを使ってスーッと車速を伸ばしていく感じはまさにハイパフォーマンスと呼べるものだ。
オーストラリアの道路は、日本に比べて舗装が粗く、常にクルマに対して厳しい条件を叩き付けるが、新たに生まれ変わったサスペンションはそれをものともせず、Sタイプに重厚感と高い直進性を授けている。
フロント/リアのサブフレームにまで手を入れ、さらにロールセンターを高めるなどした結果、スプリングとスタビライザーはよりソフトなものが使えるようになったのだという。事実コーナリングなどでも、以前に比べナチュラルなクルマの動きが実現されている。さらにステアリングも小変更を与えることで、これまでよりも確かな感触を伴ったものとなっており、安心感が高まっている。
実はここまで手を入れた理由は、SタイプRが存在したからである。本来は、これまで他モデルで採用してきた4.0LのV8スーパーチャージャーを搭載する予定で、それならば従来のシャシーで受け止めきれたわけだが、急遽新開発となる4.2LのV8スーパーチャージャーを搭載することとなって、それが発生する553Nmの大トルクを受け止める準備がシャシー側に必要になったのだという。そこでリアのサブフレームに手を入れた。するとロールセンターが従来より高くなったのだという。だからそれに合わせてフロントもサブフレームに手を入れる必要があったし、同時にロールセンターもバランスを取る必要が出てきた、というわけだ。