RV専用タイヤ、一言でいってしまえばRVの走りのハンデの解消を狙ったタイヤである。とはいえ、RVもステーションワゴンからSUV、ミニバンがあり、どれも同じというわけではない。また、SUVは元々専用タイヤを装着していた。SUVは走行状況に応じたタイヤがあり、それは別の方向で専用タイヤ発想が必要なのだが、これはまた別の機会で。
ここで、RV専用タイヤとして採り上げたいのは「ミニバン専用タイヤ」。ミニバンにはセダンやステーションワゴンと違った構造的(物理的)な特徴がある。全高が高いのである。3列シートで使いやすくするために床面地上高を高くすることが多く、着座姿勢をアップライトにしたシートポジションを採用する。といったことで全高が高くなってしまうのだが、ボディ寸法が高いだけでならばいいのだが、クルマの運動性に影響が大きい重心高が高くなるのが泣き所。重心が高いと運動性も安定性も低下する。
セダンやステーションワゴンに比べて、高速道路での直進性が悪いとか、山道で運転しづらいのはそのため。そこで、ミニバン専用タイヤでは一般的なラジアルタイヤよりも操安性を重視した設計が施される。高い重心と重い車重のクルマのフットワークを安定させるために、タイヤのケース剛性(ワイヤーなどで出来たタイヤの骨格部)を高くしたり、路面への食いつきのいいコンパウンド(ゴム質)を採用したりする。
実はこういった設計はスポーツラジアルタイヤに近いのである。ミニバン専用タイヤは、言い換えればセミスポーツタイヤともいえるのだ。
だったら、予算があればもっと高性能な本格スポーツラジアルを装着すればいい、という考え方もある。それはひとつの解答である。ただ、やりすぎると操縦性が神経質になったり、乗り心地がひどく低下したりする。ミニバンの一般的な使い方では本格スポーツラジアルは「やりすぎ」なのである。それに、スポーツラジアルにはないミニバン専用タイヤならではの特徴もある。これが一番の決め手ともいえるが肩落ち対策である。
「肩落ち」とは耳慣れない言葉だろうが、タイヤ業界ではタイヤの角(ショルダー部)が著しくすり減った偏摩耗を示す。重心が高いミニバンは一般的な乗用車よりもコーナリング時など横方向の力が加わった時にショルダー部に掛かる負荷が大きく、そのため肩落ちしやすくなるのだ。そこでミニバン専用タイヤではトレッドパターン(接地面の溝や切れ目の形)やコンパウンド、ケース剛性、プロファイル形状(回転方向で輪切りにした時の断面形状)などに工夫を凝らすことで、ショルダー部の対摩耗性を高めている。
標準装着タイヤを考えれば、ミニバン専用タイヤが必ずしも必要ではないのだが、その状態で操縦性や摩耗に不満を感じているならば、履き替える時にはちょっと予算を増やしてミニバン専用タイヤを選んでみるといい。