今回は2004年の税制改正の中で、特に中小企業のオーナー社長さんに関係のある「非上場株式の譲渡益」についてお話していきましょう。主な改正は2つです。
◆その1:税率の改正
(1)財務省のHPにあります「平成16年度税制改正の要綱」を要約すると次の様になります。
上場株式会社等以外の株式等を譲渡した場合における株式等に係る譲渡所得等の金額に対する税率を現行26%を20%(所得税15%と住民税5%)に引き下げる。この改正は2004年1月1日以後に株式等の譲渡を行ったものから適用されます。
(2)では何故この改正が行われるのでしょうか?理由としましては、
1. ベンチャー投資の促進
2. 事業承継の円滑化
3. M&A等の中小企業の積極的な経営展開の支援
という見地からです。
(3)次に上場株式と非上場株式の比較をしてみましょう。
非上場株式 | 上場株式 | |||
譲渡益 | 一般 | ~03年 | 26% | 10% |
04年~ | 20% | |||
金庫株 | 原則 | みなし配当 | 譲渡益課税 | |
相続特例 | 譲渡益課税 | |||
損失 | 他の所得との通算 | 不可 | 不可 | |
繰越控除 | 可 |
では上記の表を少しご説明いたしましょう。
(4)まず、上場株式の譲渡益の10%ですが、これは2007年までの特例です。2008年以降は20%となり、非上場株式と同じになります。今回の改正で非上場株式の譲渡益を上場株式に合わせたわけです。
◆その2:相続財産の非上場株式を自社に譲渡した場合の特例
(1)次にこの表の中に出てきます金庫株です。この金庫株とは会社が自分の会社の株を買うことです。実際にどんな時に自分の会社の株を買うのでしょうか?オーナー社長さんがご自分の会社を誰かに引き継いでもらう時ですとか、相続が発生した場合に自社に株を買い取ってもらう、といった場合が考えられます。
(2)非上場株式において、この金庫株の譲渡益は原則みなし配当課税となります。このみなし配当課税の税率は最高になると50%から配当控除を引いたものになります。
(3)今回の改正で相続財産の非上場株式を自社に売却した一定の場合は譲渡課税になります。税率は分離課税方式で20%となります。
(4)ただし、ここで気を付けなくてはいけないことが1点あります。この特例の開始は2004年4月1日以降に相続等により取得し、また譲渡したものから適用となります。2004年の税制改正の適用開始日はほとんど2004年1月1日ですが、この特例は4月1日からですのでくれぐれもお間違いのないように。
●●最後に●●
◆今回2つの改正で相続が発生したとき、自分の会社へ自社株を売却する時の税金が安くなりました。
◆相続の現場から
(1)この改正でオーナー社長さんにとっては、減税となりました。相続の現場では、今までもそしてこの特例が開始された後も、自社株は物納という方法があります。物納した後、また会社で買い戻すことが多いようです。
(2)物納なら自社株の譲渡課税はありません。