相続・相続税/遺言書の書き方

遺言書の間違った書き方 6つの失敗事例

前回は、「法的に有効な遺言」について確認をしました。「法的に有効な遺言」があっても、ご本人の意図と違う結果になることがあります。そこで遺言作成の実務上の留意点を確認しましょう。

執筆者:天野 隆

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遺言者の意図と違う遺言とは?
前回は、「法的に有効な遺言」について確認をしました。「法的に有効な遺言」があっても、内容に問題があり、遺言者の意図と違う結果になることがあります。そこで、「意図と違う遺言」の失敗事例に学びながら実務ポイントを確認しましょう。

すべての財産をもれなく記載する

遺言書を書くときの大前提は、すべての財産をもれなく記載することです。相続財産には普段あまり意識しないものも含まれていますので慎重にリストアップしておきましょう。また、漏れがあることを想定して、「特定した財産以外のすべてを配偶者が受け取る」などと書いておくと良いでしょう。漏れがあるとその分について遺産分割協議が必要となり、それをきっかけにもめる実例がありました。

預貯金は割合を書く

預貯金の分け方を指定するときは、包括的な割合を書くのが鉄則です。預貯金は残高が動くものなので、具体的な金額があるとおかしなことになる可能性があります。

例えば、「Aには5000万円、Bには4000万円、Cには2000万円」と記載されていましたが、相続発生時には8000万円しか残っていないことがありました。また、「A銀行は長男へ、B銀行は次男へ」というケース。しかし、相続時のB銀行の残高がなくなっていました。遺言者の意図とは違うようでしたが、次男さんは預金を相続出来ない結果に。相続では実に様々なことが起こります。

不動産は物件ごとに

不動産は、物件ごとに取得者を決めるのが原則です。例えば、「Aアパート(土地・建物)は長男、Bアパートは次男」といったようにします。物件の収益力に差があり、仲の良い兄弟だからといって、AとBの物件をそれぞれ共有にすることは避けましょう。共有にしてしまうと、売却や建替えのときに両者の意見が合わなければ動けなくなってしまいます。また、相続した兄弟に相続が発生し、物件の所有者がさらに増えてしまうこともあります。複雑になりすぎます。従って、不動産は、物件ごとに取得者を決めましょう。

遺留分を忘れずに

遺留分とは、相続人に最低限保証されている相続分のことです。例えば、相続人が2人の兄弟だけの場合、「すべての財産を長男に相続させる」とあったとしても、次男には相続分(1/2)の半分の1/4の遺留分があります。遺留分を侵している場合には、侵されている人から侵している人に遺留分の減殺請求をされる可能性があります。スムーズに相続を終えるには遺留分を侵さないことが大切です。

さらに、遺留分を考慮する際に、何を相続させるかも書いておくといいでしょう。例えば、4人兄弟で「長男に財産の1/2を相続させる」とだけ遺言に記載されていました。他の3人の相続人の遺留分はそれぞれ1/8(1/4×1/2)ずつですから、遺留分は侵していません。しかし、他の3人が何を相続するかでもめてしまい裁判にまで発展したことがありました。もめないように書いた遺言が逆にもめる原因となってしまいました。

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