首都直下、東海地震ともに発生の可能性は大
赤い部分が今後30年以内に震度6弱の揺れに見舞われる可能性がある地域(文部科学省地震調査研究推進本部資料より) |
それを受けて書かれた記事では平成17年3月に地震調査研究推進本部の地震調査委員会が出した「全国を概観した地震予測地図」を取り上げ、海溝型地震(*)が発生する確率が非常に高く、なかでも宮城県沖の確率は99%であることを指摘しています。
そして、それから6年後の3月11日。多くの人が忘れようとしても忘れられない、あの地震が起こりました。東日本大震災(正式には東北地方太平洋沖地震)です。三陸沖を震源とするマグニチュード9.0という巨大地震で、震源域は宮城県沖も含み、岩手県沖から茨城県沖まで広範囲。地震予知連絡会は同年4月26日に「3月11日の本震発生時に想定されている宮城県沖地震も起きていた」との見解を示しています。
歴史に残る限りでも平安時代の貞観地震以降、定期的に巨大地震を引き起こしてきた宮城沖ですが、そうした危険個所は宮城沖に限りません。特に現在、首都圏に近いところでもっとも危険とされているのが東海地震。これは駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とするマグニチュード8クラスの巨大地震とされ、いつ発生してもおかしくないと言われています。というのは、これまでおおむね100~150年の間隔で大規模な地震が発生してきたものの、この160年弱は動いておらず、相当なひずみが蓄積されていると見られるため。
もし、ここで地震が起きた場合には静岡県、山梨県の一部では震度7、静岡県ほぼ全域及び山梨県、愛知県、神奈川県、長野県、岐阜県の一部を含む広い地域で震度6強か6弱、それに隣接する周辺の地域では震度5強程度の揺れに襲われると予想されています。
また、関東大震災以来巨大地震に襲われていない首都圏も危険と言われる地域。内閣府の防災情報ページでは首都直下地震が今後30年間に起こる可能性を70%と推定しており、マグニチュードは7程度とか。大きな被害が想定されます。地震国日本に住む限り、どこに住もうが地震から無縁でいることは難しいのです。
8月16日に起きた宮城県沖地震はまだ記憶に新しいところ。幸いにして大事には至らなかったものの、昨年来続く地震への意識を強くした人も多かったのではないでしょうか。
(*)日本列島の太平洋側の海底にある海、陸、2種類のプレートの移動が起こす大地震の総称。広範囲に大きな揺れを発生させるほか、震源域が海域にあるため、津波を引き起こすことも多い
安全な地盤の上に住もう
東京の地盤は主に上記の3種類から成っている |
地震国日本に住んでいる以上、その危険から完全に逃れるのは難しいこと。とはいえ、少しでも身を守るためには、安全な場所に住むことが大事です。そのために大事なのは安全な地盤の上に住むことです。
一般に地盤とは地表から深さ約100mまでの部分を指します。この地盤の固さは地震の揺れとリンクします。ほんの数mしか離れていない場所でも、地盤が違うと揺れが違い、被害にも差が出る可能性があるのです。
首都圏では以下の3種類の地層があり、古くて固い地層ほど◎。それぞれの層の中にはいくつかの地盤があります。固くて安全な順に、
・上総層群(三浦層群)
約200万年前~約100万年前に堆積した層で、締まった泥・砂岩の層。海底に堆積したものが起源で、多摩丘陵ではこの層の上に関東ローム層が分布しています。
・洪積層
約100万年前~約2万年前(氷河期)に堆積した層で、硬い地盤が多い。いわゆる山の手 あたりの赤土の層。この中には上から関東ローム層、上部東京層、東京礫層などの地盤があります。
・沖積層
約2万年~現在までに堆積した層で、軟弱な地盤が多い。下町あたりの地層で、有楽町層や七号地層などの黒土の層。
芝浦アイランドは安全な地盤を支持層にしているだけでなく、東京都による耐震護岸で島全体が耐震構造になっている |
ちなみに設計コンサルタントの碓井民朗さんは、杭が40m以上の物件は避けたほうがいいと明言。その理由としては杭が長くなると工事費が嵩むというだけでなく、「建物は地震が起きても折れないのは、垂直の柱に加えて梁があるからだが、杭だけではどんなに深く打っても、大きな横揺れ地震が起きればひとたまりもない」(一流建築家の知恵袋 マンションの価値107/講談社α新書)と書かれています。そして「安全を期すなら杭の深さが20m程度までのマンションを選ぶのが安全だろう」とも。
しかし、地震への備えは地盤を考えるだけではまだまだ。建物の倒壊、火災の発生といった危険も考えて、より安全な場所を次ページで考えていきましょう。